シラバス Syllabus

授業名 アジア社会経済論
Course Title Society and Economy of Asia
担当教員 Instructor Name 松尾 信之(Nobuyuki Matsuo)
コード Couse Code NUC177_N20A
授業形態 Class Type 講義 Regular course
授業形式 Class Format
単位 Credits 2
言語 Language JP
科目区分 Course Category
学位 Degree BSc
開講情報 Terms / Location 2020 UG Nisshin Term2

授業の概要 Course Overview

Misson Statementとの関係性 / Connection to our Mission Statement

授業の目的(意義) / Importance of this course

A. 本科目の意義、背景、内容、重要性

 意義、背景、重要性は以下の2点です。

 1.近世、近代における欧米先進国と他地域(アジアを含む)との経済的格差の拡大について、特に西欧とアジアとの交易の役割を中心に、基 礎的知識を身に付ける(現代における、欧米とアジアとの経済的格差縮小については、担当者の別科目「東アジアの経済発展論」で扱います)。

 2.それを通じて現在の世界の状況を理解し、またそれに対する自分の考えをまとめる。

 内容は下記です。近世以前は西欧と他地域との経済的格差は小さかったと考えられています。その後の格差拡大について、本科目では、特に西欧とアジアとの交易(東西貿易)の役割を重視します。大航海時代以降の東西貿易の拡大から、1 9世紀後半から20世紀前半におけるアジア諸地域間における活発な貿易までを対象として、この問題を考えます。

講義におけるケースメソッドの導入

全7回それぞれにおいて、事前指定課題・配布プリントなどを使い、各回の内容に即したテーマに関するディスカッション(まずグループで、次いでクラス全体で)を行います。事前指定課題・テーマなどは各週のシラバスに示してありますが、例えば最終回では、近世・近代におけるアジアと欧米との経済的格差拡大は、必然だったのか、それとも他の道もありえたのか、をケースとします。まずグループ毎にディスカッションします。その後、各グループのディスカッション内容をクラス全体にプレゼンし、全体で質疑応答をします。

B. 卒業認定・学位授与の方針と当該授業科目の関連について

 「ディプロマポリシー」の根幹である「建学の精神」に「国際主義」とあり、学生の「広い視野と深い洞察力」を要求している。本科目はそれらの養成を目的としている。

 本科目では、上記のラーニングゴールの確かな実現に向けて、ケース教材を用いた討論授業を行います。本科目の履修者には、討論授業に参加するための予習レポートの作成と、クラスでの積極的な発言が求められます。
A. Students are required to learn basic knowledge about the role of trade between Europe and Asia in the "Great Divergence" and to have their own point of view on it. Students are supposed to learn the history of trade from 15th century to the first part of 20th century.

B. This course intends to foster students' international point of view.

In this course, we will conduct class discussions using case studies in order to achieve the learning goals. The students attending this course may be required to write a preparatory report and must participate in the class discussions.

到達目標 / Achievement Goal


本授業の該当ラーニングゴール Learning Goals

*本学の教育ミッションを具現化する形で設定されています。

LG1 Critical Thinking
LG2 Diversity Awareness

受講後得られる具体的スキルや知識 Learning Outcomes

 近世、近代における欧米先進国と他地域(アジアを含む)との経済的格差の拡大について、特に西欧とアジアとの交易の役割を中心に、基 礎的知識を身に付ける

Students learn basic knowledge about the role of trade between Europe and Asia in the "Great Divergence" and to have their own point of view on it.

SDGsとの関連性 Relevance to Sustainable Development Goals

教育手法 Teaching Method

教育手法 Teaching Method % of Course Time
インプット型 Traditional 50 %
参加者中心型 Participant-Centered Learning ケースメソッド Case Method 50 %
フィールドメソッド Field Method 0 %
合計 Total 100 %

事前学修と事後学修の内容、レポート、課題に対するフィードバック方法 Pre- and Post-Course Learning, Report, Feedback methods

・準備学習:各週、事前に指定したテキスト(原則として教科書の一部分)を読み、事前課題の答案を作成し、プリントアウトして提出(約2時間)。

・レポートについて:各週の事前課題の答案を、レポートとします。

・中央情報センターの活用について:教科書、参考書はすべて情報センターに置いてあります。その他の関連する資料も含め、積極的に利用してください。

授業スケジュール Course Schedule

第1日(Day1)

1 イントロダクション
 まず本科目の目的・内容・計画・具体的進行方法や、学生に望む態度を述べます。次いで現代のアジア・世界を考える上での、近 世から現代までの、, 欧 米先進国と他地域との経済的格差の拡大と縮小、の重要性を述べ、特に本科目ではその拡大を取り上げることを述べます。

2 格差拡大の出発点

 現代にいたる欧米と他地域との経済的格差はいつ生じたのでしょうか? 近代化以前まで、世 界各地域の経済成長率は非常に低く(1パーセントをはるかに下回る)、か つ地域間の格差も小さかった(1820年頃でせいぜい数倍)と考えられています。し かし18世紀に西欧が工業化によって急激な経済成長を始めたため、他地域との格差が急激に拡大した、と考えられています。工業化開始の原因として、一方では西欧内部の状況と考えられますが、本科目で注目するのは他方、すなわち西欧と他地域との交易です。

●使用するケース
欧米と他地域との経済的格差が生じなかったら、現代の世界はどのような状況になっていたでしょう?

事前課題:教科書(「グローバル経済史入門」)の8-12ページを読み、下記の1、2を作成し、プリントアウトして講義開始時に提出する。
1.要約(200字程度)
2.上記のテーマに対する自分の考え(200字程度)

 クラスでは事前課題・配布プリントなどを使い、上記テーマに関するディスカッション(まずグループで、次いでクラス全体で)を行います。複数あげ、それぞれどのようにして格差拡大につながったのか、も述べてください。

第2日(Day2)

1 大航海時代直前の状況

 中世において、世界の貿易で最も大きな役割を果たしていたのが、イスラム商人によるインド洋貿易です。そ の主産品はコショウを主とする香料でした。ユーラシア各地に様々な物品をもたらしました。西欧の外部との交易は、世 界全体から見れば小さなものでした。


2 大航海時代

 1500年前後から、アジアの香料を求めたポルトガル人、スペイン人の活動により、大航海時代が始まります。ス ペイン人の進出により中南米は西欧の経済圏に入ります。中南米から世界にもたらされた銀により、世界的貿易ブームが起こります。インド洋・南 シナ海に進出したポルトガル人は、香料貿易の独占を図りましたが、インド・イ スラム商人の地位を崩すことは出来ませんでした。


●使用するケース
●使用するケース
「南蛮貿易」の、日本経済への影響
(南蛮貿易(鎖国前の西欧諸国との貿易)が行われなかったら、この時期の日本経済は、どのようになったでしょうか? 実際と大きく異なったでしょうか?)

事前課題:教科書(「グローバル経済史入門」)の53-58ページを読み、下記の1、2を作成し、プリントアウトして講義開始時に提出する。
1.要約(200字程度)
2.上記のテーマに対する自分の考え(200字程度)

 クラスでは事前課題・配布プリントなどを使い、上記テーマに関するディスカッション(まずグループで、次いでクラス全体で)を行います。複数あげ、それぞれについて説明してください。

 まとめ:当時の、そしてその後の日本経済にとっての重要性(とても大きかった~とても小さかった、など)を考えてください。

第3日(Day3)

オランダの時代

 17世紀にオランダは世界の貿易の主導権を握り、香料貿易の独占を、特にインドネシアにおいて実現しました。この時期、東西交易における香料の重要性は非常に高く、”スパイス黄金時代”と呼ばれます。しかし17世紀末以降に、ア ジアから西欧への主力商品が、香料から繊維製品へと変化し、また西欧にとってアジア貿易より大西洋貿易が重要になったことなどで、経済的覇権はイギリスに奪われました。

●使用するケース
17世紀における日本と西欧との格差。
(鎖国で日本が(オランダも含め)すべての西欧諸国との貿易との貿易をストップしていたら、オランダ・日本のどちらが、どのような点で困った? 困らなかった?)

 事前課題:教科書(「グローバル経済史入門」)の29-34ページを読み、下記の1、2を作成し、プリントアウトして講義開始時に提出する。
1.要約(200字程度)
2.上記のテーマに対する自分の考え(200字程度)

 クラスでは事前課題・配布プリントなどを使い、上記テーマに関するディスカッション(まずグループで、次いでクラス全体で)を行います。複数あげ、それぞれについて説明してください。
 17世紀における日本と西欧との関係(鎖国政策、貿易、西欧武器の利用など)を知り、当時の日本と西欧との、経済的ないし軍事的な格差を考えてください。

第4日(Day4)

18世紀

 西欧はさまざまなアジア産品を輸入してきたのですが、その多くをアフリカ・アメリカ両大陸を含んだ地域で、生産するようになり、大 西洋経済圏が形成されます。それらの産品のうち、特に綿製品の生産拡大のために、産業革命が生じました。

●使用するケース
西欧が1700年代、1800年代にアジア産品の自給自足(コーヒー、カカオ、タバコ、砂糖、綿製品など)に失敗していたら、その後の世界はどうなったでしょう?

 事前課題:教科書(「グローバル経済史入門」)の34-42ページを読み、下記の1、2を作成し、プリントアウトして講義開始時に提出する。
1.要約(200字程度)
2.上記のテーマに対する自分の考え(200字程度)

 クラスでは事前課題・配布プリントなどを使い、上記テーマに関するディスカッション(まずグループで、次いでクラス全体で)を行います。複数あげ、それぞれについて説明してください。

第5日(Day5)

1 産業革命

 産業革命は18世紀後半のイギリスの綿工業で起こりました。19世紀に入ると本格化し、西欧さらには北米にまで普及していきます。また軽工業から重工業にも広がっていきます。諸科学・技術も進歩して、欧米は軍事的にも強大になりました。

2.地域格差の拡大

 産業革命の進展により、欧米の経済成長率は急上昇し、他地域との格差が急激に拡大していきます。

●使用するケース
 「18世紀後半、イギリスとインドとの間で、綿製品生産コストの逆転が起こり、インド綿は西欧において競争力を失いました。インドの綿工業が競争力を維持するためには、この時期(の前後)に、どうしたらよかったでしょうか?」

 18世紀まで、インド産の綿製品が西欧に大量に輸出されていました。しかしイギリスにおいて産業革命がはじまり、綿製品生産にも動力が導入されてました。するとイギリスにおける綿製品生産コストが低下し、19世紀前半にはインド綿は価格競争力を失い、西欧市場はイギリス綿に奪われました。さらに19世紀半ばには、イギリス産綿製品のインドへの輸出量が急増し、インドの綿工業は大きな打撃を受けてしまいます。こうした競争力の逆転を防ぐためには、インドはどうしたらよかったでしょうか?」

 事前課題:教科書(「グローバル経済史入門」)の88-100ページを読み、下記の1、2を作成し、プリントアウトして講義開始時に提出する。
1.要約(200字程度)
2.上記のテーマに対する自分の考え(200字程度)

 クラスでは事前課題・配布プリントなどを使い、上記テーマに関するディスカッション(まずグループで、次いでクラス全体で)を行います。複数あげ、それぞれについて説明してください。

第6日(Day6)

1 朝貢システム=東アジア貿易圏
 18世紀まで、アジア(特に東アジア)に対する、西欧の経済的・政治的影響は小さかったのです。19世紀に至るまで、中 国は周辺諸国との間で朝貢を通じた外交関係を結び、この朝貢を軸とした貿易圏が形成されました。つまり中国中心の国際関係が存在したのです

2 欧米のアジア進出

 19世紀、産業革命が進展し、また諸科学・技術も進歩して軍事的にも強大になった西欧は、アジアに進出します。こ の時期でもまだ茶を中心としたアジア産品輸入のため、対アジア貿易赤字でしたが、自由貿易の強制と、繊維製品輸出などにより、貿 易を黒字化させます。以後、アジアと西欧との経済的格差が拡大していきます。ビデオ鑑賞「世界暮らし旅:お茶」


●使用するケース
1800年代後半のタイ王国の経済顧問だったとして、どのような政策(目的、具体策、予想される結果)をアドバイスしますか?

 事前課題:教科書(「グローバル経済史入門」)の140-144ページを読み、下記の1、2を作成し、プリントアウトして講義開始時に提出する。
1.要約(200字程度)
2.上記のテーマに対する自分の考え(200字程度)

 クラスでは事前課題・配布プリントなどを使い、上記テーマに関するディスカッション(まずグループで、次いでクラス全体で)を行います。複数あげ、それぞれについて説明してください。

 17世紀後半から19世紀前半の東アジアは、例えば同時代の西欧と比較すれば、国家間の戦争も少なく、平和で安定したと言えます。多くの国が、西欧との関係に制限を加えていました。これらは日本にとってどのような意味を持ったでしょう。

 クラスでは事前課題・配布プリントなどを使い、上記テーマに関するディスカッション(まずグループで、次いでクラス全体で)を行います。複数あげ、それぞれについて説明してください。

第7日(Day7)

欧米との格差拡大について
 
 近世・近代におけるアジアと欧米との経済的格差拡大は、必然だったのか、それとも他の道もありえたのか。

●使用するケース
欧米との格差拡大について
(特にアジアは)どのようにすれば、17世紀以降の西欧との格差拡大を防げたのか?
 
 事前課題:教科書(「グローバル経済史入門」)の8-12ページを読み、下記の1、2を作成し、プリントアウトして講義開始時に提出する。
1.要約(200字程度)
2.上記のテーマに対する自分の考え(200字程度)

 クラスでは事前課題・配布プリントなどを使い、上記テーマに関するディスカッション(まずグループで、次いでクラス全体で)を行います。複数あげ、それぞれについて説明してください。

成績評価方法 Evaluation Criteria

*成績は下記該当項目を基に決定されます。
*クラス貢献度合計はコールドコールと授業内での挙手発言の合算値です。
講師用内規準拠 Method of Assessment Weights
コールドコール Cold Call 0 %
授業内での挙手発言 Class Contribution 20 %
クラス貢献度合計 Class Contribution Total 20 %
予習レポート Preparation Report 30 %
小テスト Quizzes / Tests 0 %
シミュレーション成績 Simulation 0 %
ケース試験 Case Exam 0 %
最終レポート Final Report 0 %
期末試験 Final Exam 50 %
参加者による相互評価 Peer Assessment 0 %
合計 Total 100 %

評価の留意事項 Notes on Evaluation Criteria

 受講態度が、他の受講生の講義参加を妨げるようなものであった場合は、減点します。

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重点クラブのレポート試験について

 松尾は経験上、レポート試験と定期試験とを、公平に成績評価することがとても困難であると感じています。従って重点クラブのレポート試験は行いません。重点クラブのみなさま、申し訳ありません。

使用ケース一覧 List of Cases

    ケースは使用しません。

教科書 Textbook

  • 杉山 伸也「グローバル経済史入門」 岩波書店(岩波新書)(2014)978-4004315124

参考文献・資料 Additional Readings and Resource

(1)川勝平太「文明の海洋史観」中公叢書 1997,4-12-002715-5
(2)岸本美緒「東アジアの『近世』」山川出版社 1998,4-634-34130-1
(3)浜下武志「朝貢システムと近代アジア」岩波書店 1997
(4)加藤祐三「イギリスとアジア」岩波新書 1980
(5)山田憲太郎「香料の歴史」紀伊国屋新書 1994,4-314-00654-4
(6)杉原薫「アジア間貿易の形成と構造」ミネルヴァ書房 1996,4-623-02565-9
(7)鶴見良行・村井吉敬編著「道のアジア史」同文舘 1991,4-495-85581-6
(8) ロバート・C・ア レン (著), グローバル経済史研究会 (翻訳)
なぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか 単行本 2012/11/30 ISBN-13: 978-4757123045
(9)エリック・ライオネル ジョーンズ (著) 
経済成長の世界史 単行本 – 2007/1  4104円  ISBN-13: 978-4815805449
(10)ケネス ポメランツ (著), スティーヴン トピック (著),「グローバル経済の誕生: 貿易が作り変えたこの世界 」(単行本) 単行本 – 2013/8/22  4104円 ISBN-13: 978-4480867230
(11)アンドレ-グンダー・フランク (著), 山下 範久 (翻訳) 「リオリエント〔アジア時代のグローバル・エコノミー〕」 単行本 – 2000/5/30  6264円 ISBN-13: 978-4894341791

授業調査に対するコメント Comment on Course Evaluation

平均前後の評価だったので、よりよい評価が得られるよう努力します。

担当教員のプロフィール About the Instructor 

文学修士 東京大学

研究分野:アジア史、東南アジア社会

M.A. University of Tokyo

Asian history, Society in Southeast Asia

Refereed Articles

  • (2016) Vietnamese History Seen from the Mountain Areas. Grants-in-Aid for Scientific Research - JSPS






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