シラバス Syllabus

授業名 独禁法と企業
Course Title Anti-Monopoly Law and Firms
担当教員 Instructor Name 吉野 一郎(Ichiro Yoshino)
コード Couse Code NUC173_N20A
授業形態 Class Type 講義 Regular course
授業形式 Class Format
単位 Credits 2
言語 Language JP
科目区分 Course Category
学位 Degree BSc
開講情報 Terms / Location 2020 UG Nisshin Term2

授業の概要 Course Overview

Misson Statementとの関係性 / Connection to our Mission Statement

授業の目的(意義) / Importance of this course

企業が顧客を獲得するために様々な形で競争を行っています。競争は、企業がより良いものを安く販売することを通じて消費者に便益をもたらすとともに、企業の活力の源であり成長の原動力となっっています。ただ、競争に生き抜くために工夫された企業行動には企業の利潤獲得が消費者の利益の増進をともにもたらすものがある反面、利潤獲得が企業間の競争を制限して、一般消費者に損失をもたらすことで実現されるものも含まれることをしっかり認識しておかなければなりません。後者のような企業行動に対しては、いくら市場での競争が原則自由であるからといって全く自由放任にしておくわけにはいきません。そこで、企業が不当な手段に訴えて私益を貪るような場合は当然それを罰し、禁止することが必要となります。さらに、手段が正当であっても企業と消費者の利益に対立が起こる場合は、適切に調整を行わなければなりません。そのために、我が国では独占禁止法という法律があり、それに基づいて公正取引委員会が監視・調整役を努めて、正当な自由競争の利益を増進することに努めています。この講義では、独占禁止法の理解することで、市場競争を促進することがなぜ豊かな社会の基盤となるのかについて深く考えていきます。また、現実の問題としてのカルテル・談合についても議論していきます。
この講義のラーニングゴールは、LG1:Critical ThinkingとLG3:Ethical Decision Makingです。
本科目では、上記のラーニングゴールの確かな実現に向けて、ケース教材を用いた討論授業を行います。本科目の履修者には、討論授業に参加するための予習レポートの作成と、クラスでの積極的な発言が求められます。
This lecture starts with a brief discussion of what competition policy is, its main target and basic values. Then, it is emphasized that Anti- Monopoly Law is the fundamental rule in market economy. It is widely accepted that the wealth of the country could be attributed to free and fair market competition. The aim of Anti-monopoly law is to secure free and fair market competition by regulating firm's ill behavior such as collusion to avert competition or abusing market power to disclose market. Indeed, regulation itself could be harmful to firm's managerial decisions by increasing market uncertainty. So in the lecture, economic rationale for intervention on the ground of Anti-monopoly law is also examined in each actual law enforcement example.
The learning goals of this course are LG1:Critical Thinking and LG3: Ethical Decision Making.
In this course, we will conduct class discussions using case studies in order to achieve the learning goals. The students attending this course may be required to write a preparatory report and must participate in the class discussions.

到達目標 / Achievement Goal


本授業の該当ラーニングゴール Learning Goals

*本学の教育ミッションを具現化する形で設定されています。

LG1 Critical Thinking
LG3 Ethical Decision Making

受講後得られる具体的スキルや知識 Learning Outcomes

競争政策および独占禁止法についての基本的な知識をえる。また、企業の従業員として、あるいは経営者として、独禁法を遵守することが、重大な社会的責任を果たすことになることを理解できる。

Get knowledge of Competition Policy and Anti-monopoly Law. Also get awareness of social responsibility as an employee or a manager.

SDGsとの関連性 Relevance to Sustainable Development Goals

教育手法 Teaching Method

教育手法 Teaching Method % of Course Time
インプット型 Traditional 50 %
参加者中心型 Participant-Centered Learning ケースメソッド Case Method 50 %
フィールドメソッド Field Method 0 %
合計 Total 100 %

事前学修と事後学修の内容、レポート、課題に対するフィードバック方法 Pre- and Post-Course Learning, Report, Feedback methods

ゲームおよびケースで何を学んだかを振り返る作業をレポートとして作成・提出します。

授業スケジュール Course Schedule

第1日(Day1)

独占禁止法という法律について、その目的を説明します。市場という制度が自由競争原理をベースにしてしっかり管理されることが私たちの生活においてどれだけ大切なことなのかを理解します。




























●使用するケース
●使用するケース
価格付けゲーム:市場において競争が機能することの大切さをゲームによって体験的に理解します。グループに別れてから、各グループが一企業として利益をあえて行くために自社の製品にどのような価格を付けるのか考えてもらいます。価格付けが市場における競争環境によってどのように変化するかを観察します。

第2日(Day2)

公正取引委員会の役割を理解します。独禁法によって企業の反競争的な行為を規制する役割を担っているのが公正取引委員会です。独禁法違反行為の被害者となる消費者にとって、公取委がどのような意味で大切な存在であるかを説明します。前週の価格付けゲームの結果を振り返って、規制が必要になるのはどのような状況なのか、またどのような規制が必要なのかについて考察します。

●使用するケース
●使用するケース
ケースはありません。

第3日(Day3)

カルテル・入札談合について説明します。独禁法で規制の対象となる反競争的行為は競争回避的行為と競争排除的行為に大別されます。競争回避的行為としてのカルテル・入札談合についてその仕組みと規制について理解します。消費者にどのような損害をもたらすのか、その規制がどうして難しいのか、どうやったらよりよくカルテル・談合を抑止できるのかについて考察します。

●使用するケース
●使用するケース
入札談合ゲーム:グループに分かれて、公共入札に参加する企業としてどのような入札戦略をとるべきか体験して見ます。市場が競争的である場合の入札価格の決め方がどのようなものかを理解するとともに、企業間で談合が行われる場合にはどのような仕組みが必要になるのかを考えてもらいます。

第4日(Day4)

カルテル・談合の規制において2006年から導入されている課徴金減免制度について説明します。この制度がど導入された経緯、その目的、仕組み、効果について考察します。


●使用するケース
●使用するケース
課徴金減免制度と談合の抑止:教科書のCase Study 11(295ページ)
課徴金減免制度においては、カルテルに参加した企業同士にあるゲームのプレイヤーとしてプレイすることを求めています。そこで、グループに分かれてもらい、カルテル・談合に参加してしまった企業の立場でどのような行動をとるべきかについてゲームの中で考えてもらいます。

第5日(Day5)

私的独占について説明します。独禁法が規制する反競争的行為のもう一つのカテゴリーである競争阻害的な行為である私的独占について考察します。この行為への独禁法としての規制は2000年以降厳しくなってきている背景についてまず理解します。その上で、この行為が自由競争における公正な競争行為とどう違うのかについて考えます。

●使用するケース
●使用するケース
航空市場の略奪価格問題:教科書のCase Study12(300 - 301ページ)
航空旅客輸送サービス市場における大手航空会社による新規低価格低サービス企業の参入に対する行為が私的独占に当たるかどうかの実際の例について考えます。

第6日(Day6)

公正な競争市場と不公正な取引方法の規制について説明します。自由競争市場は、そこに参加する企業が公正な競争ルールに従って競うことに合意していなければ期待されている役割を果たすことはできません。公正な競争行為とは何を意味するのかについて考察します。


●使用するケース
●使用するケース
マイクロソフト事件(1)OSとアプリソフト、マイクロソフト事件 (2)ワープロソフトと表計算ソフト(参考文献「競争の戦略と政策」の10章4節(289 - 291ページ)

第7日(Day7)

競争政策の今後の課題について説明します。現在はインターネットをインフラとして活用する情報価値産業が大きな存在になっています。その市場において公正な自由競争が確保されるかどうかは、消費者の未来の利益の問題です。講義全体を振り返りながら自分なりの意見を求めてもらいます。


●使用するケース
●使用するケース
ケースはありません。

成績評価方法 Evaluation Criteria

*成績は下記該当項目を基に決定されます。
*クラス貢献度合計はコールドコールと授業内での挙手発言の合算値です。
講師用内規準拠 Method of Assessment Weights
コールドコール Cold Call 0 %
授業内での挙手発言 Class Contribution 20 %
クラス貢献度合計 Class Contribution Total 20 %
予習レポート Preparation Report 30 %
小テスト Quizzes / Tests 0 %
シミュレーション成績 Simulation 0 %
ケース試験 Case Exam 0 %
最終レポート Final Report 0 %
期末試験 Final Exam 50 %
参加者による相互評価 Peer Assessment 0 %
合計 Total 100 %

評価の留意事項 Notes on Evaluation Criteria

期末試験では、講義で配布する講義ノートの内容について問題を出します。自宅での学習用に小テストを用意していますので期末試験までには取り組んでおいてください。

使用ケース一覧 List of Cases

    ケースは使用しません。

教科書 Textbook

  • 柳川隆・町野和夫・吉野一郎「ミクロ経済学・入門:ビジネスと政策を読みとく:新版」有斐閣(2015)978-4-641-22047-8

参考文献・資料 Additional Readings and Resource

[1]柳川隆・川濱昇編著『競争の戦略と政策』有斐閣, 2006, 4-641-18339-42
[2]岡田羊祐・林秀弥編著『独占禁止法の経済学』東京大学出版会 2009,978- 4-13-046099-6
[3]岡田羊祐・川濱昇・林秀弥編著『独禁法審判決の法と経済学』東京大学出版会, 2017, 978-4-13-040279-8
[4]長岡貞男・平尾由紀子著『産業組織の経済学 第2版』日本評論社, 2013, 978-4-535-55667-6
[5] ジョン・ケイ著『市場の真実』中央経済社、2007, 978-4-502-65760-3

授業調査に対するコメント Comment on Course Evaluation

事例をより多く活用して、クラスでの討論ができるように工夫していきたいと考えています。

担当教員のプロフィール About the Instructor 

学位と取得大学:
修士(経済学)一橋大学、M.Sc.(経済学)ロンドンスクールオブエコノミクス

研究分野:
応用ミクロ経済学、産業組織論、競争政策

主な論文:
”Overusing a bypass under asymmetric access regulation: Strategic
investment with spillovers" (2015), with Mizuno, K., Journal of Regulatory Economics
47(1), 29-57
"Distorted Access Regulation with strategic investments:Regulatory non-commitment and spillovers revisited"(2012), with Mizuno,K., Information Economics and Policy 24(2), 120-131

主な著書:
『ミクロ経済学入門:ビジネスと政策を読み解く 新版』(共著)、有斐閣、2015年
『競争の戦略と政策』(分担執筆)、有斐閣、2006年

Degree and university accredited:
Master(Economics)@HItotsubashi University
Master of Science(Economics)@ London School of Economics

Research Fields:
Applied Microeconomics, Industrial Organization, Competition Policy

Articles Published:
”Overusing a bypass under asymmetric access regulation: Strategic
investment with spillovers" (2015), with Mizuno, K., Journal of Regulatory Economics
47(1), 29-57
"Distorted Access Regulation with strategic investments:Regulatory non-commitment and spillovers revisited"(2012), with Mizuno,K., Information Economics and Policy 24(2), 120-131

Books Published:
”Introduction to Microeconomics for Business and Public Policy new edition"(2015) Yuhikaku
"Competition: Strategy and Policy" (2006) Yuhikaku











Refereed Articles

  • (2015) Overusing a bypass under cost-based access regulation: underinvestment with spillovers. Journal of Regulatory Economics 47(1): 0922-680X
  • (2012) Distorted access regulation with strategic investments:Regulatory non-commitment and spillovers revisited. Information Economics and Policy 24(2): 1676245
  • (2009) Rail Reform in EU and Germany. The Kokumin-keizai Zasshi 199(5): 3873129






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