シラバス Syllabus

授業名 ミクロ経済学
Course Title Microeconomics
担当教員 Instructor Name 吉野 一郎(Ichiro Yoshino)
コード Couse Code NUC102_N20A
授業形態 Class Type 講義 Regular course
授業形式 Class Format
単位 Credits 2
言語 Language JP
科目区分 Course Category
学位 Degree BSc
開講情報 Terms / Location 2020 UG Nisshin Term1

授業の概要 Course Overview

Misson Statementとの関係性 / Connection to our Mission Statement

授業の目的(意義) / Importance of this course

 ミクロ経済学は極めてシンプルな思考方法を使ってあらゆる社会経済現象をきちんと説明しようとする学問です。さらに、ミクロ経済学の研究者は、社会経済現象を説明した上でそこに見出される解決すべき社会的課題への処方箋を見つけてやろうという野心も持っています。この講義では、そんなミクロ経済学が持つ極めてシンプルな考え方が実は大学一年生の皆さんにも多かれ少なかれ備わっているということに気付いてもらって、皆さん自身がどの程度のミクロ経済学的思考型人間なのかを自覚してもらうことを目的にしています。もしかしたら皆さんの中にはミクロ経済学的な考え方は嫌いだなと感じる人も出てくるかもしれません。そうであったとしても、この社会が直面する問題がそもそもどのような問題なのかを理解する上で、ミクロ経済学的な物の見方は必ず一つの有益な視点を与えてくれるはずです。
 経済学はマクロ経済学とミクロ経済学に大別されます。マ クロ経済学が一国全体の所得や物価水準といった経済全体の動きを説明するのに対して、ミクロ経済学は個別の経済主体の行動が市場(しじょう)で どのようにお互いに関係して経済取引を実現するのかを説明します。ここで、個別の経済主体とは、消費者(家計)、企業に分類できます。消費者は、 生産要素としての土地、資本、労働の各種サービスを提供し、それらが生産に貢献する対価としての所得を得ます。そして、そ の所得から生産された財(有形のモノ)・サービスを購入して消費を行い、残りを貯蓄します。これに対し、企業は、各 種生産要素のサービスを購入して生産活動を行い、財・サービスを生産します。企業が生産した財・サ ービスを販売して得られた収入から生産要素サービスの購入費用を支払うと、手元に利潤が残ります。
消費者は、自分の所得を使って何をどれだけ消費するのかを合理的に決めるとミクロ経済学では想定しますが、これを効用最大化の想定と呼びます。企業は、自分の技術を使って何をどれだけ生産するのかを合理的に決めると想定しますが、これを利潤最大化の想定と呼びます。効用最大化の消費者と利潤最大化の企業が出会うところが市場です。市場では、何 がどれだけ欲しがられているかという需要(じゅよう)側と、何がどれだけ生産されようとしているのかという供給(きょうきゅう)側 とが出会い結び付けられる取引が実行されます。この取引の実行において重要な役割を果たすのが市場競争です。特に、企 業間の競争の重要性はこの講義でしっかり理解されなければならないテーマです。
本学の教育においては国際的な幅で活躍するビジネスマンとして備えるべき知識を獲得することが目指されていますが、経済活動はグローバル化して経済現象も複雑になり、変化も激しくなってきています。こ のように私たちが理解したい対象がとらえがたくなればなるほど心がけなければならないことは、ど の部分はある普遍的な法則にしたがった変化であり、どの部分がその対象に固有の、特殊な要因によって引き起こされたのかをしっかり見極めるという腰の据わった姿勢をとることです。ミクロ経済学は、市場取引・競争・需要・供給・効率的な市場という一貫したモノの見方がどれだけ多くの現象の理解の助けになるかを教えてくれます。
なお、本科目では、上記のラーニングゴールの確かな実現に向けて、ケース教材を用いた討論授業を行います。本科目の履修者には、討論授業に参加するための予習レポートの作成と、クラスでの積極的な発言が求められます。
This is an introductory course for Microeconomics.
In your daily life, you can observe price change in almost all products. Some are rising and others are declining. For instance, gas prices are becoming cheaper and cheaper in one time,but they are upward swinging in other time. Why do they move to certain direction for certain period of time? Can we make an reliable foreast what will happen in these market variables like prices and amount of productions?
Microeconomics will give you an answer to these questions. Key concepts you can leran are Demand,Supply,Equilibruim,Competition and Efficiency. Combining these concepts sysytematcially, you will get an idea of the way how market works effectively. Especially, it will certainly be an intellectual surprise when you understand the basic message of Microeconomics; Competition is indispensable for markets to achieve Efficiency.

 In this course, we will conduct class discussions using case studies in order to achieve the learning goals. The students attending this course may be required to write a preparatory report and must participate in the class discussion.

到達目標 / Achievement Goal


本授業の該当ラーニングゴール Learning Goals

*本学の教育ミッションを具現化する形で設定されています。

LG1 Critical Thinking

受講後得られる具体的スキルや知識 Learning Outcomes

新聞の経済記事を読んで、どうして商品の価格が上がったり、下がったりするのか。ドラッグストアで買い物していて、
どうしてこの商品はこの価格で販売されているのか、ということを自然に考えるようになります。それができるようになると経済現象を論理的に分析するための最初の一歩を踏み出すことができます。

You will find yourself to be able to see the economic change phenomena from an analytic point of view. These phenomena range from price changes of the products at the drug stores to shortage of supply of influenza vaccine.

SDGsとの関連性 Relevance to Sustainable Development Goals

教育手法 Teaching Method

教育手法 Teaching Method % of Course Time
インプット型 Traditional 50 %
参加者中心型 Participant-Centered Learning ケースメソッド Case Method 50 %
フィールドメソッド Field Method 0 %
合計 Total 100 %

事前学修と事後学修の内容、レポート、課題に対するフィードバック方法 Pre- and Post-Course Learning, Report, Feedback methods

ケースについては、事前課題に取り組んだ成果をレポートとして提出してもらいます。事前課題をベースにしてクラスでのケース討論を行いますのでしっかり準備して下さい。事前課題についての経済学としての解答はクラスできちんと解説しますが、その内容は定期試験で出題されますので講義ノートを丁寧にとっておいて下さい。

授業スケジュール Course Schedule

第1日(Day1)

ミクロ経済学的思考とは何か:ミクロ経済学的な思考の基本的なモードは、どのような選択をするにしても、常にその選択によって得られる便益と、その選択を実行するために発生する費用を考えるというものです。便益も費用も金額で評価しなければなりませんが、ミクロ経済学では一見すると金額で評価するのが難しそうなモノに対しても独特な考え方によってうまく金額評価をして、便益から費用を差し引いいた純便益を最大にする選択肢を選ぶのが合理的な選択だというように考えます。1回目の講義では、この思考モードを徹底するとき、人間がどのような思考をしてどのような選択をすることになるのか(ホモ・エコノミクス)をある例によって考えてみます。また、どのようなモノでもそれを得ようとすると必ず費用が発生することについて説明します。2回目の講義では、機会費用について説明します。

















































●使用するケース
●使用するケース
ケース『ホモ・エコノミクス1:僕の事業継続計画はこれだよ!』(自主作成)
ケース『ホモ・エコノミクス2:お兄ちゃんはそれでよかったんでしょう?』(自主作成)
ケース『タダこんないいランチが食べれてよかったね。』(自主作成)

第2日(Day2)

前半の講義では、ケース討論を行います。教科書のコラム1についての事前課題に取り組んで、準備レポートとして用意して、それに基づいてクラスでの討論で意見を出してもらいます。
後半の講義では、支払許容額について説明して、価格と支払許容額の比較によって需要量が決まるということについて説明して需要曲線を描いてみます。また、市場の需要曲線について説明します。

●使用するケース
●使用するケース
ケース『大学に通うための費用っていくら?』(自主作成)

第3日(Day3)

前半の講義では、ケース討論を行います。ケースについての事前課題に取り組んで、準備レポートとして用意して、それに基づいてクラスでの討論で意見を出してもらいます。
後半の講義では、一つ一つの財について成立する市場がお互いに消費者の選択を通して関連しあっていることを説明します。代替財、補完財と需要曲線のシフトについて理解します。

●使用するケース
●使用するケース
ケース『たばこの需要量を減らそう!』(自主作成)

第4日(Day4)

前半の講義では、ケース討論を行います。ケースについての事前課題に取り組んで、準備レポートとして用意して、それに基づいてクラスでの討論で意見を出してもらいます。
後半の講義では、企業の利潤最大化行動について説明します。また、「市場での企業間の競争」という視点を導入して、市場価格が市場における競争の様態によってどのように違ってくるのかを理解します。

●使用するケース
●使用するケース
ケース『ワインの輸入量を増やすにはどうすればいいの?』(自主作成)

第5日(Day5)

前半の講義では、ケース討論を行います。ケースについての事前課題に取り組んで、準備レポートとして用意して、それに基づいてクラスでの討論で意見を出してもらいます。
後半の講義では、企業の利潤最大化行動について価格差別の観点から説明します。

●使用するケース
ケース『このスーツいくらで売りますか?』(自主作成)

第6日(Day6)

前半の講義では、ケース討論を行います。教科書のコラム1についての事前課題に取り組んで、準備レポートとして用意して、それに基づいてクラスでの討論で意見を出してもらいます。
後半の講義では、価格調整メカニズムがうまく働かない市場で発生する非効率について説明します。

●使用するケース
●使用するケース
ケース『返品したいので返金してください!』(参考文献:「エコノリーガル・スタディーズのすすめ」より作成)

第7日(Day7)

前半の講義では、ケース討論を行います。教科書のコラム1についての事前課題に取り組んで、準備レポートとして用意して、それに基づいてクラスでの討論で意見を出してもらいます。
後半の講義では、この講義全体の要点を確認して、定期試験への準備について説明します。

●使用するケース
●使用するケース
ケース『最低賃金を上げると経済格差はどうなるの?』(自主作成)

成績評価方法 Evaluation Criteria

*成績は下記該当項目を基に決定されます。
*クラス貢献度合計はコールドコールと授業内での挙手発言の合算値です。
講師用内規準拠 Method of Assessment Weights
コールドコール Cold Call 0 %
授業内での挙手発言 Class Contribution 20 %
クラス貢献度合計 Class Contribution Total 20 %
予習レポート Preparation Report 30 %
小テスト Quizzes / Tests 0 %
シミュレーション成績 Simulation 0 %
ケース試験 Case Exam 0 %
最終レポート Final Report 0 %
期末試験 Final Exam 50 %
参加者による相互評価 Peer Assessment 0 %
合計 Total 100 %

評価の留意事項 Notes on Evaluation Criteria

予習レポートは6回、各5%の合計30%分の評価になります。
ケースを基にしたクラス討論では、発言一回に対して基本点1点にインパクト係数2.0〜3.0を掛けた点を付与します。
例えば、討論のターニングポイントになるような発言には最大で3点付与されます。
なお、期末試験は教科書で読むように指定するところを範囲として出題します。

使用ケース一覧 List of Cases

    ケースは使用しません。

教科書 Textbook

  • 柳川 隆・町野和夫・吉野一郎「ミクロ経済学・入門:ビジネスと政策を読みとく新版」有斐閣(2015)978-4-641-22047-8

参考文献・資料 Additional Readings and Resource

[1] 大竹文雄 著『競争と公平感』中央公論新社, 2011,978-4-12-102045-1

[2] アセモグル・レイブソン・リスト著『マクロ経済学』2019, 東洋経済新報社,978-4-492-31512-5

[3] マンキュー著『マンキュー経済学Ⅰ:ミクロ編』東洋経済新報社

[4]  スティグリッツ=ウォルシュ著『スティグリッツ ミクロ経済学』東洋経済新報社

[5] 柳川隆・高橋祐・大内伸哉編『エコノリーガル・スタディーズのすすめ』2014, 有斐閣

授業調査に対するコメント Comment on Course Evaluation

出来るだけ講義中の発言を促します。また、その評価も公平に行います。

担当教員のプロフィール About the Instructor 

学位と取得大学:
修士(経済学)一橋大学、M.Sc.(経済学)ロンドンスクールオブエコノミクス

研究分野:
応用ミクロ経済学、産業組織論、競争政策

主な論文:
”Overusing a bypass under asymmetric access regulation: Strategic
investment with spillovers" (2015), with Mizuno, K., Journal of Regulatory Economics
47(1), 29-57
"Distorted Access Regulation with strategic investments:Regulatory non-commitment and spillovers revisited"(2012), with Mizuno,K., Information Economics and Policy 24(2), 120-131

主な著書:
『ミクロ経済学入門:ビジネスと政策を読み解く 新版』(共著)、有斐閣、2015年
『競争の戦略と政策』(分担執筆)、有斐閣、2006年

Degree and university accredited:
Master(Economics)@HItotsubashi University
Master of Science(Economics)@ London School of Economics

Research Fields:
Applied Microeconomics, Industrial Organization, Competition Policy

Articles Published:
”Overusing a bypass under asymmetric access regulation: Strategic
investment with spillovers" (2015), with Mizuno, K., Journal of Regulatory Economics
47(1), 29-57
"Distorted Access Regulation with strategic investments:Regulatory non-commitment and spillovers revisited"(2012), with Mizuno,K., Information Economics and Policy 24(2), 120-131

Books Published:
”Introduction to Microeconomics for Business and Public Policy new edition"(2015) Yuhikaku
"Competition: Strategy and Policy" (2006) Yuhikaku











Refereed Articles

  • (2015) Overusing a bypass under cost-based access regulation: underinvestment with spillovers. Journal of Regulatory Economics 47(1): 0922-680X
  • (2012) Distorted access regulation with strategic investments:Regulatory non-commitment and spillovers revisited. Information Economics and Policy 24(2): 1676245
  • (2009) Rail Reform in EU and Germany. The Kokumin-keizai Zasshi 199(5): 3873129






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