シラバス Syllabus

授業名 オーストラリアの社会と文化
Course Title Society and Culture of Australia
担当教員 Instructor Name 鎌田 真弓(Mayumi Kamada)
コード Couse Code NUC099_N20B
授業形態 Class Type 講義 Regular course
授業形式 Class Format
単位 Credits 2
言語 Language JP
科目区分 Course Category
学位 Degree BSc
開講情報 Terms / Location 2020 UG Nisshin Term3

授業の概要 Course Overview

Misson Statementとの関係性 / Connection to our Mission Statement

授業の目的(意義) / Importance of this course

 国際的なビジネスの舞台で活躍するためには、多様な文化や価値を理解し、柔軟に対応する力が必要です。また、グローバル化が進む今日では、日本社会や職場環境の多様性が進展することは避けられません。本科目では、ビジネス・リーダーの素養として不可欠な、幅広い教養、柔軟な感性、異文化に対する理解や倫理観、論理的な思考力を養うことを目的としています。
 本科目では、移民国家であるオーストラリアが多民族・多文化社会化をどのように成し遂げてきたのか、多文化社会が抱える課題とは何か、オーストラリアの人びとのケースを使いながら、日本と比較しつつ論じてみたいと思います。「多文化共生」は、日本においても重要な課題として認識されています。したがって、社会の多様性や持続可能性を意識しつつ、今日的課題を批判的に考察する力を身につけます。日々変化する国際社会の状況のみならず、歴史や地理に関する幅広い知識や、そうした知識を統合する力を身につけてください。さらに、異文化に対する受容力を高めるとともに、新たな知識や価値観をグローバルな視点から捉え、実践する「国際人」としての力を養ってください。
 本科目では、挙手による発言やディスカッションへの参加度、リアクションペーパーやレポート、定期試験によって習熟度をはかります。Google Classroomで公開されている講義資料や参考文献を使って自学自習を行うとともに、教室での積極的な参加姿勢を期待します。
The objective of this course is to foster students’ understanding of different culture and sensitivity to the diversity, and to train logical thinking, which are indispensable to be business leaders. Not only for business abroad but also in Japan, it will be inevitable to encounter diverse culture in the globalized business reality.
We will focus on Australia; how Australia transformed to be a multicultural society, what were the concerns, and how the problems solved. We will also look into the Japanese society where ‘diversity’ has been an important issue. Thorough the course, students are required to understand Australia’s effort to overcome problems of multicultural society, and to think about its implication to Japan. This course shall equip students with basic knowledge and global perspectives of diversity in the societies, to bring innovation and high ethical standard to their management practice.
Students would be multilaterally evaluated, including their participation to the discussions, submission of reaction papers and essays, and exams. Students are encouraged to study for themselves, using the materials uploaded in the Google Classroom and the references listed in the syllabus.

到達目標 / Achievement Goal


本授業の該当ラーニングゴール Learning Goals

*本学の教育ミッションを具現化する形で設定されています。

LG1 Critical Thinking
LG2 Diversity Awareness
LG3 Ethical Decision Making
LG4 Effective Communication

受講後得られる具体的スキルや知識 Learning Outcomes

 本科目は教養教育科目ですから、専門分野での学習を支えるための基本的な知識や思考力を育成することを目的としています。特に、オーストラリアでの取組みをグローバル化する社会における課題として認識し、日本にも適用される多文化社会のあり方を考えます。異文化に対する受容力を高めるとともに、新たな知識や価値観をグローバルな視点から捉え、実践する「国際人」としての力を養います。

  This subject is placed in the general academic subjects of the NUCB. This course therefore provides students with basic knowledge and global perspectives of diversity in the societies, in order to bring innovation and high ethical standard to their management practice. In particular in this course, students shall think about how Japan should overcome the problems of multicultural society, by studying about Australia’s effort. Students are also expected to be receptive to diverse values, and to be equipped with high ethical standard to their management practice.

SDGsとの関連性 Relevance to Sustainable Development Goals

教育手法 Teaching Method

教育手法 Teaching Method % of Course Time
インプット型 Traditional 60 %
参加者中心型 Participant-Centered Learning ケースメソッド Case Method 40 %
フィールドメソッド Field Method 0 %
合計 Total 100 %

事前学修と事後学修の内容、レポート、課題に対するフィードバック方法 Pre- and Post-Course Learning, Report, Feedback methods

学習方法
講義資料や講義用プレゼンテーションをGoogole Classroomにアップロードしています。自学自習に活用してください。写真資料を多く使いますので、各自ダウンロードをして印刷したものを持参し、メモを書き込んでいくと充実したノートができると思います。

課題に対するフィードバック方法
中間試験は返却して講義中に解説しますので、復習に役立ててください。希望があれば、オフィスアワーに研究室で個別に指導します。また、リアクションペーパーや任意レポートでの興味深い質問や意見は講義中に紹介し、さらに議論を深めたいと思います。

図書館の活用について
刻々と変化する国際情勢を知る上では、ウェブサイトの情報はとても有効です。けれども、ウェブサイトに頼りすぎてはいけません。自らの議論を展開するためには、信頼性の高いデータを入手したり、複数の客観的な論考を読んだりすることが必要です。図書館で、様々なデータや論考を入手する方法を修得してください。また、映画も文化を知る上で効果的ですから、図書館所蔵のオーストラリア映画を観てください。

授業スケジュール Course Schedule

第1日(Day1)

 イントロダクション:「オーストラリア」の誕生
 移民国家オーストラリアの現状を紹介する。私たちが「伝統・文化」と認識しているものも、実は「創られた伝統」である場合も多い。もイギリス流刑植民地として出発したオーストラリアの歴史をふりかえりつつ、オーストラリア人が自画像として描いてきたオーストラリア人のルーツを探るとともに、「建国」の歴史を考える。


●使用するケース
・ ケース:ナヨンさんのお願い
・ ビデオ: Waltzing Matilda
・ ビデオ: オーストラリア国歌

第2日(Day2)

開拓のフロンティア:オーストラリア「建国」
 1860年代にはオーストラリア内陸部の探検がすすみ、入植地は広がり、アボリジニの人口は激減していった。さらに、植民地時代のオーストラリアは、中国人や日本人、太平洋諸島の人びとなどが契約労働者として働く多文化社会であった。しかしながら、ゴールド・ラッシュを契機に中国人の排斥と「白いオーストラリア」の形成が始まった。連邦結成の過程とその要因を探り、ナショナリズムが抱える排外主義について考える。


●使用するケース
・ ケース:村松治郎

第3日(Day3)

「開拓」の光と影:フロンティアでの衝突
 「開拓」は先住民族にとっては侵略であり、彼らの土地の収奪であった。人口の減少や混血化が進み、先住民族社会は崩壊していった。20世紀に入って、オーストラリアが国家としての装いを整えるとともに、先住民族アボリジニは厳しい管理のもとに置かれた。親子強制隔離政策などの対先住民政策について論じるとともに、権利回復のプロセスを知る。さらに、こうした歴史に対する今日の認識のあり方を考える。

●使用するケース
・ 映画:裸足の1500マイル
・ ビデオ:ラッド首相の謝罪
・ ケース:弘さんの留学体験―アボリジニ

第4日(Day4)

オーストラリアと戦争
  第一次大戦中のガリポリ上陸作戦が行なわれた日を記念するアンザック・デー(4月25日)は、オーストラリア・デー(1月26日)と並ぶ、オーストラリア国民にとって重要な祝日である。兵士への追悼が、なぜそれほど重要性を持つのか、第一次世界大戦および第二次世界大戦(特に太平洋戦争)の記念式典を通じて考える。


●使用するケース
・ 映画:レイルウェイ:運命の旅路
・ ビデオ:チャンギ
・ ケース:弘さんの留学体験―戦争

第5日(Day5)

オーストラリアの移民・難民政策
 オーストラリアの移民政策は、基本的に人口政策である。第二次大戦後オーストラリアは、人口不足を補うために大量移民政策を展開したために、はからずも非英国系移民が増大して、アジア系移民の受け入れの土壌が作られ、多文化政策への変更を余儀なくされた。オーストラリアが多文化政策へと方向を転換した要因を探る。さらに、1970年代のインドシナ難民の受け入れは、オーストラリア社会の「アジア化」を促す転機となった。1980年代以降の多民族・多文化社会オーストラリアへの変化の過程を論じるとともに、昨今のオーストラリアの難民政策について述べる。


●使用するケース
・ ケース:ユカさん一家の決断
・ ケース:グラムさんの将来

第6日(Day6)

多文化社会の先住民
 1970年代以降、オーストラリア先住民族の権利回復が始まり、1990年代には先住権が認められ、先住民族との「和解」のプロセスも始まった。2008年2月、ラッド首相は「盗まれた世代」に対して公式謝罪を行い、先住民族との象徴的な「和解」に達したといえる。しかしながら、先住民と非先住オーストラリア人との格差は依然大きいままである。多文化社会化するオーストラリアにおける先住民族の状況について論じるとともに、日本の状況を考える。


●使用するケース
・ ケース:ジムさんの選択
・ ケース:ケンさんの怒り

第7日(Day7)

多文化社会への模索
 オーストラリア・デー(1月26日)はオーストラリアへの入植開始の記念日である。「建国記念日」か「侵略の始まり」か、オーストラリア国内でもその日の意義とあり方が問われている。経済合理主義に基づく移民・難民政策や先住民政策、あるいは先住民族との「和解」や格差是正など、多文化オーストラリア社会が抱える課題を考える。


●使用するケース
・ ビデオ:ユートピア
・ ビデオ:先住民ヒップホッププロジェクト
・ 弘さんの留学体験―就職

成績評価方法 Evaluation Criteria

*成績は下記該当項目を基に決定されます。
*クラス貢献度合計はコールドコールと授業内での挙手発言の合算値です。
講師用内規準拠 Method of Assessment Weights
コールドコール Cold Call 0 %
授業内での挙手発言 Class Contribution 20 %
クラス貢献度合計 Class Contribution Total 20 %
予習レポート Preparation Report 0 %
小テスト Quizzes / Tests 10 %
シミュレーション成績 Simulation 0 %
ケース試験 Case Exam 0 %
最終レポート Final Report 20 %
期末試験 Final Exam 50 %
参加者による相互評価 Peer Assessment 0 %
合計 Total 100 %

評価の留意事項 Notes on Evaluation Criteria

グループディスカッションへの参加度やリアクションペーパーも積極的に評価します。加点対象となるプレゼン希望者も募集します。様々な方法で本講義に参加してください。

使用ケース一覧 List of Cases

    ケースは使用しません。

教科書 Textbook

  • 関根政美他「オーストラリア多文化社会論」法律文化社(2020)978-4-589-04053-4

参考文献・資料 Additional Readings and Resource

鎌田真弓編著『日本とオーストラリアの太平洋戦争ー記憶の国境線を問う』御茶の水書房、2012:978-4275009784
山内由理子編『オーストラリア先住民と日本:先住民学・交流・表象』御茶の水書房、2014:978-4275010810
村井吉敬・内海愛子・飯笹佐代子編著『海境を越える人びとー真珠とナマコとアラフラ海ー』コモンズ、2016:978-4861871337
竹田いさみ他『オーストラリア入門 第2版』東京大学出版会、2009:978-4130032063

授業調査に対するコメント Comment on Course Evaluation

 ある特定地域を学習は、知識の修得以上に、柔軟な発想や思考力の育成に役立ちます。好奇心を旺盛にして、日本社会と比較しながら、多様な価値観への理解力を身に付けてください。講義資料はデジタル化し、Google Classroomから入手できるようになっていますので、自学自習に利用してください。写真や絵画や図表などが多く含まれていますから、各自で取り出して印刷したものを持参すると効果的な学習ができます。 
 声帯が弱くて、大きな声を出すことができません。講義中に声が聞こえにくかったり、画面が見えにくい場合は、その都度指摘してください。

担当教員のプロフィール About the Instructor 

学位:
修士(国際関係学)津田塾大学
MPhil(Asian Studies) グリフィス大学
PhD(International Relations)オーストラリア国立大学

研究分野:
オーストラリア研究、国際政治学、国際関係論
特にオーストラリアのナショナリズム(先住民問題、戦争の記憶)および境界研究に関心をもつ。

Academic degrees:
MA (International Relations) Tsuda College, Tokyo, Japan
MPhil (Asian Studdies) Griffith University, Brisbane, Australia
PhD (International Relations) Australian National University> Canberra, Australia

Fields of Research
Australian Studies, International Politics, International Relations
In particular she is interested in Nationalism in Australia (including Indigenous issues and memory of wars), and Border Studies.

Refereed Articles

  • (2023) A Reading of the Account Books of J & T Muramats: Ethnography of its Business and Japanese Indentures Laborers in Cossack, Western Australia. Journal of Australian Studies 36 091998911
  • (2020) Kaken Final Report:Dynamism of the Marine Frontier: territorialization of Australia's northern waters and subsistence tactics of the people in the border regions. Grants-in-Aid for Scientific Research - JSPS
  • (2020) Jiro Muramats (1878-1943): A Japanese Businessman in Australia. Grants-in-Aid for Scientific Research - JSPS
  • (2019) Records of Japanese in the Internment camps in Australia during the Pacific War. A book funded by the Grants-in-Aid for Scientific Research
  • (2017) Dynamism of Transborder Migration in the Arafura Sea Region: Customary Knowledge Across the National Boundaries. Grants-in-Aid for Scientific Research - JSPS






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