シラバス Syllabus

授業名 危機管理と事業継続
Course Title Crisis Management and Business Continuity
担当教員 Instructor Name 刈屋 武昭(Takeaki Kariya)
コード Couse Code EST209_G20O
授業形態 Class Type 講義 Regular course
授業形式 Class Format
単位 Credits 1
言語 Language JP
科目区分 Course Category
学位 Degree Exed
開講情報 Terms / Location 2020 GSM Osaka Fall

授業の概要 Course Overview

Misson Statementとの関係性 / Connection to our Mission Statement

授業の目的(意義) / Importance of this course

リスクマネジメントでは、企業のみならず、国家や個人においても、危機とは、起こる確率(頻度)は小さいが、起きた時極めて大きな損害・衝撃・破壊や生命の損失をもたらすものをいう。例えば、(1)パンデミック、地震・津波、台風・洪水、戦争・テロ、ハッキング・重要IT基盤への攻撃など、外部リスクにかかわるものだけでなく、(2)企業においては、オーナー会社で情報や関係性を独占的に持つオーナーの死、企業倫理・文化の退廃、トップがかかわる不祥事・不正や隠ぺい、法令順守違反などが企業全体の存在に関わる危機に発展する内部リスクも含めることができる。(3)また内部と外部の間にあって、望まない買収攻撃を受けることも危機に含めることができる。狭い意味では(1)が典型的で、コロナ伝染病、東日本大震災など枚挙いとわない。(2)では、タカタ、東芝、雪印などが、また(3)についてはブルドックソース、小糸製作所などが、その例とも見ることができる。これらのカテゴリーでは、(2)は、取締役・社長による企業文化・理念・倫理を設定確認し、自らも含めてその枠組みの中に入り、透明性を確保して毎年報告するという、エンタープライズ・リスクマネジメントを徹底することで、一定の範囲で危機リスクは極めて小さくできる。しかし、東芝の不祥事のように、独立外部取締役などを近年のガバナンスを法制化しても、トップが直接に関わる不祥事、不正は、現在の法制度の下では、防ぐのが困難であろう。(3)は、経営の進化の中で対応がなされてきている。一方、進化対応不能リスクに関わる経営問題も、企業を倒産に追い込むという意味で、ここでは危機として一部扱う。例えば、(4)技術進化に対応できない経営(KODAKなど)による倒産や、(5)内部対立などによる統治不能(JALなど)による倒産である。
 授業では、(1)(2) (3)(4)(5)を含める。当然のことながら、危機管理の具体的な計画は、業種、保有資産、立地などで異なるが、その具体例を参考にしながら議論する。また事後レポートとして具体的な計画事例を作成するか、調査するかして提出してもらう。(1)の危機対応への思考法は、What-if法が基本である。それは例えば、リスクとして東京直下型地震を原因事象とした場合、もしそれが起きた場合、「わが社」としては、どうするかを考えることである。そして画餅でなく実際に実行可能な事業継続計画を作り、毎年一度見直すことである。
 今回のコロナ危機では、この計画を持っていた資生堂、パナソニックなどではその計画に沿って対応したとのことである。
In risk management, a crisis for not only firms but also a government and individuals may be defined as a risk with the small occurrence probability and large damageability bringing an agent to a margin of destruction, loss of life, bankruptcy. Hence, what is really a crisis depends on the agents that need the management.
As examples of crisis, there are 3 categories: (1) external risk, (2) internal risk and (3) internal-external risk. The category (1) includes pandemics, big earthquakes and tsunami, natural disaster, war, cyber terrorism etc. The second includes internal battle between two big power holders in a company, or severe fight between management and union, curruption of corporate culture and ethics, violation of compliance, death of a CEO that knows important contracts or technological secrets, breakdown of a main computer system with important information, etc. The third one includes hostile M&A activities, etc.
In this course we discuss on these crises with actual examples for a firm to seek survival and sustainability.

到達目標 / Achievement Goal


本授業の該当ラーニングゴール Learning Goals

*本学の教育ミッションを具現化する形で設定されています。

LG1 Critical Thinking
LG2 Diversity Awareness
LG3 Ethical Decision Making
LG7 Global Perspective (GLP)

受講後得られる具体的スキルや知識 Learning Outcomes

危機リスクマネジメントと危機に対する事業継続の基本的考え方が得られ、その思考法に基づく危機管理の実践法、事業継続計画法を理解・実践できる能力が形成される。

Basic knowledge and thoughts on crisis management and business continuity planning are acquired, and practical ability for making practical buisness continuity planning.

SDGsとの関連性 Relevance to Sustainable Development Goals

教育手法 Teaching Method

教育手法 Teaching Method % of Course Time
インプット型 Traditional 20 %
参加者中心型 Participant-Centered Learning ケースメソッド Case Method 50 %
フィールドメソッド Field Method 30 %
合計 Total 100 %

事前学修と事後学修の内容、レポート、課題に対するフィードバック方法 Pre- and Post-Course Learning, Report, Feedback methods

基礎資料を配布するので、それを学習してきてもらいたい。また事前に出題する課題についてレポートを作り、授業前までに提出することで、授業に積極的に参加してください。
事後レポートとして、自社もしくは他社の、特定な危機について、事業継続計画を提出する。詳細はケースブックに記載します。

授業スケジュール Course Schedule

第1日(Day1)

最初に、危機管理と事業継続計画について、その基本的考え方と実際についてレクチャーし、その後議論する。そこには中越地震で工場が破壊されたリケンや事業継続のための無形資産の保護の事例、などいくつかの事例を含む。つぎに、資生堂のケースのパンデミックスの事例などを議論する。

●使用するケース
CCJB-IVE-18033-01 ネットフリックス・インク: ディスラプター(破壊者)が破壊の危機

第2日(Day2)

事業継続の考え方と実践法について、個別事業や大企業のように多くの事業を抱えている場合について、重要な危機の種別ごとに講義し、ケースに基づいて議論する。
特に、米国ブロックバスターやタカタ、あるいはエンロンの崩壊には、複数の危機の原因となるケネス・レイによる経営問題があった。これらの危機の遠因をERMの危機管理の視点から見ていく。

●使用するケース
エンロンの崩壊(IMD‐1‐0195‐JP)

第3日(Day3)



第4日(Day4)



第5日(Day5)



第6日(Day6)



第7日(Day7)



成績評価方法 Evaluation Criteria

*成績は下記該当項目を基に決定されます。
*クラス貢献度合計はコールドコールと授業内での挙手発言の合算値です。
講師用内規準拠 Method of Assessment Weights
コールドコール Cold Call 5 %
授業内での挙手発言 Class Contribution 60 %
クラス貢献度合計 Class Contribution Total 65 %
予習レポート Preparation Report 15 %
小テスト Quizzes / Tests 0 %
シミュレーション成績 Simulation 0 %
ケース試験 Case Exam 0 %
最終レポート Final Report 20 %
期末試験 Final Exam 0 %
参加者による相互評価 Peer Assessment 0 %
合計 Total 100 %

評価の留意事項 Notes on Evaluation Criteria

発言回数だけでなく、発言の内容も評価の対象とします。

使用ケース一覧 List of Cases

    ケースは使用しません。

教科書 Textbook

  • 東京海上日動リスクコンサルティング株式会社「リスクマネジメント」秀和システム(2006)

参考文献・資料 Additional Readings and Resource

教科書は使用しない。授業ではケースを用いるが、受講生には次の参考資料が配布されるのでそれを読んでくること。
 ノート:危機リスクマネジメントと事業継続計画(BCP)の考え方と実際

<参考文献・資料>
1.「リスク評価手法の内部監査での25の活用事例」日本内部監査協会2016 (無料ダウンロード可能) file:///F:/RM2020/内部監査協会RMa03_1611.pdf 
2.経産省産業資金課編(2005)『先進企業から学ぶ事業リスクマネジメント』経済産業調査会(無料ダウンロード可能)  https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1009673 これは事務的なハウツーの側面が強く、その意味で実際的。
3.ウォーカー・シェンカー・バートン著(刈屋監訳)(2003)『戦略的事業リスク経営‐ノーリスク・ノーマネジメント』東洋経済新報社
4、バートン・シェンカー・ウォーカー著(刈屋・佐藤・藤田訳)(2003)『収益を作る戦略的リスクマネジメント―米国優良企業の成功事例』東洋経済新報社
5.日本内部監査協会(2008)『COSO全社的リスクマネジメント 』同文館
6.東京海上日動リスクコンサルティング(2006)『リスクマネジメント』秀和システム
7.荒木博行(2019)『世界「倒産」図鑑』日経BP社
8.佐藤文昭(2017)『日本の電機産業失敗の教訓』朝日新聞出版
9.クレイトン・クリステンセン(2002)『イノベーションのジレンマ』翔泳社

授業調査に対するコメント Comment on Course Evaluation

互いに啓発できるような授業運営をしたいと思っています。

担当教員のプロフィール About the Instructor 

疑いもなく、私たちの時代は、大きな進化の過程の中にあります。その進化は、私たちの社会を豊かにしていく一方、リスク・不確実性を拡大させていきます。その進化を促す要因は、私たちの幸せへの希求でもあり、それを実現していくのは広い意味での新しい知識と資本でしょう。新しい知識を生産しない企業や国は持続的成長力・競争力を失っていきます。
私の担当科目は、TAPエンタープライズ・リスクマネジメント、MBAリスクマネジメント、MBAファイナンスです。共通のテーマは、リスクとチャンスから価値を創りだす思考法です。私のコースを履修することで、ぜひその思考法を身に着けていただきたい。「自分を変える、自分は変わる」思考法でもあります。価値創造を目指す企業活動は、自己変革の継続こそが、自己の持続性を確保する道でしょう。企業を取り巻く経営環境は、技術革新、市場変化、規制・制度変化、需要の変化、競争、国内・国際政治変化、気候変動など外部変化・進化のみならず、企業内部の派閥対立、文化・倫理の退廃、ガバナンスの崩壊、内部の意思疎通の崩壊など、きわめて多岐にわたります。これらのリスク・チャンスを実際の価値に変換していくのは、具体的なアイデアや工夫、革新であり、それが成功した時には新しい知識になるでしょう。互いに啓発しあって、一緒に変わっていきましょう。
一橋大学経済学修士。ミネソタ大学統計学部Ph.D. 九州大学理学博士。一橋大学名誉教授。米国数理統計学会フェロー。日本統計学会賞、日本金融・証券計量・工学学会賞、日本不動産金融工学学会賞、受賞。
職歴:一橋大学経済研究所教授、みずほ第一フィナンシャルテクノロジー理事、京都大学経済研究所・金融工学研究センター長、明治大学専門職大学院ビジネススクール・研究科長、城西国際大学特任教授を経て現在。客員ポストとして、 ロンドンスクール・オブ・エコノミックス、ピッツバーグ大学、ラトガース大学、シカゴ大学・ビジネススクール、等客員教授。経済企画庁経済研究所客員主任研究官、日本銀行金融研究所客員研究官、経済産業研究所ファキュリティフェロー、内閣府景気動向指数研究会委員、財務省財務総合政策研究所40年国債発行研究会委員長等。
日本金融・証券計量・工学学会(ジャフィー)、日本不動産金融工学学会(ジャレフ)、日本保険・年金リスク学会(ジャリップ)、日本価値創造エンタープライズ・リスクマネジメント(ERM)学会、の4学会設立会長。 日本経済学会誌、日本統計学会誌、Mathematical Financeの編集長、副編集長経験
【専門領域】統計学、ファイナンス、金融工学、経済学、経営学、リスクマネジメント、不動産分析。
最近の著書に刈屋・小林・清水(2017)『賃貸・分譲住宅の価格分析法の考え方と実際』プログレスなど、多数。


Takeaki KARIYA is a professor of finance, risk management and ERM at NUCB Business School.
No doubt, our era is in the process of great evolution. While the evolution will make our society better off, it will also expand uncertainties (risk & chance) therein. One of the factors that promote the evolution is our sincere wish for happiness and peace, and the power that makes it realized will be our knowledge in a broad sense and capital. No enterprise or even country that cannot create new knowledge will obtain its sustainability and competitive power.
I take the subjects in charge; enterprise risk management, business risk management and finance. A common theme in these subjects is a thought of creating value out of evolution, risk and chance or equivalently uncertainty. By taking my courses, I hope you will acquire this thought for making your carrier in future. It is the thought on “why and how you need to change yourself and you naturally get changed”. In the activities seeking value creation, only the companies that constantly manage the confronting important uncertainties and reform themselves will be entitled to pursue their sustainability and growth. The uncertainties are of such varieties as the external ones of technology, market, competition, demand, economic environment, regulation, etc. and the internal ones of corporate culture and ethics, internal conflicts, corporate governance, etc. Managing those risks and chances and transforming them into a value is nothing but concrete and specific ideas, schemes, plans, and sometimes innovative thoughts. When successful, it will be knowledge for the organization. Let us enlighten each other and create our knowledge in class.

In the past, Takeaki KARIYA served as professors at Institute of Economic Research of Hitotsubashi University, Institute of Economic Research and Financial Engineering Center of Kyoto University, Business School (Dean) of Meiji University and Josai International University. In addition, he worked as a research director for Mizuho Dai-ichi Financial Technology, a subsidiary of Mizuho Bank. He was also a visiting professor of London School of Economics, Business School of University of Chicago and Rutgers University among others.
He was the founding president of the four academic institutions; Japanese Association of Financial Econometrics & Engineering, Japanese Association of Risk, Insurance and Pension, Japanese Association of Real Estate Financial Engineering, and Japanese Association of Value-Creating Enterprise Risk Management (ERM).  
In research, he was individually ranked the 24th in Annals of Statistics and the 45th in the total of 9 academic journals, which appeared as an article; P.C.B. Phillips, et al (1988) "Worldwide Institutional and Individual Rankings in Statistical Theory by Journal Publications over the Period 1980-1986" Econometric Theory, 4,1-34.
He was elected as a fellow of Institute of Mathematical Statistics (US) and received the Awards of Japan Statistics Society, Japanese Association of Financial Econometrics and Engineering, and Japanese Association of Real Estate Financial Engineering.

Specialized Field
Statistics, Econometrics, Economics, Finance, Financial Engineering, Risk Management, Enterprise Risk Management, Real Estate Analysis
Academic Background
Ph.D. Statistics (University of Minnesota), Dr. Mathematics (Kyushu University)
Publications
Kariya, T. and Liu, R. (2003) Asset Pricing, Springer, Boston
Kariya, T. and Kurata, H. (2005) Generalized Least Squares, John Wiley, London
Kariya, T. (1993) Quantitative Methods for Portfolio Analysis, Kluwer Academic Publishers (Now Springer), Boston.
Kariya, T. and Sinha, B. K. (1988). The Robustness of Statistical Tests. Academic Press, New York.

Research Papers
[1] Kariya, T., Y. Yamamura, K. Inui (2019). Empirical Credit Risk Ratings of Individual Corporate Bonds and Derivation of Term Structures of Default Probabilities Journal of Risk and Financial Management 2019, 12, 124(1-29)
[2] Kariya, T. and Kobayashi, Y. (2019). An overview over hedonic price analyses on rental condominiums and for-sale condominiums. Journal of Japanese Association of Real Estate Financial Engineering 11,1,1-8.
[3] Kariya, T. and Kobayashi, Y. (2018). Variable selection and multi- collinearity problems in hedonic price regression analysis for rental and for-sale houses. Journal of Japanese Association of Real Estate Financial Engineering 10,1,10-18
[4] Kariya, T. (2017). Effectiveness of corporate culture and legislation of management responsibility associated with case of Kobe Steel, Ltd. JARIP Journal.
[5] Kariya, T. (2017). Management and value-creating ERM—Case of shopping center. Proceedings of 10-year Commemorative Symposium JAVCERM.
[6] Kariya, T., Y. Tanokura, H. Takada, and Y. Yamamura (2016). Measuring Credit Risk of Individual Corporate Bonds in US Energy Sector. Asia-Pacific Financial Markets 23: 229–62.

Refereed Articles

  • (2019) Empirical Credit Risk Ratings of Individual Corporate Bonds and Derivation of Term Structures of Default Probabilities. Journal of Risk and Financial Management 2019, 12, 124(1-29) 12(3):
  • (2019) An overview on Empirical Hedonic Analyses for Pricing Rental Condo Units or Houses for sale.. Journal of Japanese Association of Real Estate Financial Engineering 11
  • (2018) Variable Selection and Multicollinearity Problems In Hedonic Regression Analyses for Pricing Rental Condo Units or for-sale Houses.. Journal of Japanese Association of Real Estate Financial Engineering 10
  • (2017) Effectiveness of corporate culture and management responsibility--Focusing on the case of KOVELCO Scandal. Jouranal of the Japanese Association of Risk, Insurance and Pensions 9
  • (2016) A Dynamic Bond Pricing Model with Application to the Japanese Government Bonds. Annual review of economics 32 09108602

Refereed Proceedings

  • (2021). Why ERM is not adopted in Japanese management under company system--- Example of Panasonic case. The Japanese Association of Value Creating Enterprise Risk Management .The 15th Annual JAVCERM Meetingl. 3. 1. Tokyo






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