授業名 | リスクマネジメント |
---|---|
Course Title | Risk Management for MBA |
担当教員 Instructor Name | 刈屋 武昭(Takeaki Kariya) |
コード Couse Code | EST111_G20T |
授業形態 Class Type | 講義 Regular course |
単位 Credits | 1 |
言語 Language | JP |
学位 Degree | Exed |
開講情報 Terms / Location | 2020 GSM Tokyo Spring |
授業の概要 Course Overview
Misson Statementとの関係性 / Connection to our Mission Statement
授業の目的(意義) / Importance of this course
授業では、「事業リスクマネジメント(RM)」とは, 価値を作るビジネス経営プロセスの一つであるとしてとらえる。すなわちそれは、事業に関わるリスクとチャンスを識別・分析・評価し、事業リスク(価値を毀損するもの)を合理的な方法で管理(保有・管理、回避、削減、移転、分散化等)して、リターン(付加価値)を最大化することで、事業価値を高めるための活動プロセスである、とみる。授業では、リスクマネジメントのプロセスが有効となる思考法と分析法について議論する。
周知のように、ビジネスをするとはリスクをとり、常に不確実性(リスク・チャンス)の中から価値を創造することでしかない(No uncertainty, no business)。ビジネスの世界でのRMでは、リスク対応への視点は、リスクの内容と企業風土、企業の置かれている状況、保有する資源、組織と権限委譲の関係、経営トップの判断、などに応じて、多様な思考法、知識、あるいは倫理的な判断を必要とする。特に戦略的リスクや、危機リスク、コンプライアンス・リスクに関して、そのような問題が起きることもある。その例は、いわゆる組織がらみの不祥事の隠蔽などがその例である。
この思考法と必要なスキルを書いた、【1】「事業リスクマネジメントの考え方と実際」で最初にレクチャーする。そこでは、RMの基礎概念、RMプロセス、RMの諸方法について学習する。そのあと予備レポートで準備してきた【2】ケース「ムサシ薬品中州店の悩みと本社のリスクマネジメント」を利用して、その店の
リスクマップ(発生頻度(確率)vs影響度の2次元マップ)と、
保有リスク構造マップ(コアリスク・ノンコアリスクvs内部・外部リスクの2次元図)、
リスク対応法
を議論する。午後には、同じ資料で、ムサシ薬品本社のリスク分析でのリスクについての理解と彼らのリスク対策法について議論する。
2日目の午前・午後では、企業の不祥事に関係する、企業文化・倫理・理念、企業風土など、組織精神性に関係したリスク・ファクターとその内容について議論する。
最初に【3】ケース「松下電器産業の変革」と補助資料②を利用してこの問題を議論する。90年代末期に「松下電器の変革」に導いた原因は、経営者のみが対応可能なエンパワーメントに関わる、経営文化リスクであり、そのリスクにリアクティブに対応したのが中村革命である、とみることができる。実際、ジャーナリズムは潜在的な内部対立に関係している問題であると、指摘してきた(資料②)。組織は経営陣が組織理念、組織文化的に統一されないと、企業の経営プロセスにいろいろな形でモラルハザードや、サボタージュ、倫理崩壊等とが起こり、不祥事が起こるリスクが高まり、コストが上昇して、価値創造の能力を毀損する。この問題は、難しいが、午後の資料【4】と③により、組織精神性資産(理念、倫理、文化)と不祥事と経営者責任問題と一緒に考えていく。
午前には、創業者が設定した松下電器の文化的基盤、80年代から90年代にかけてその変化、創業者ファミリーと経営者たちとの関係などに絡む組織の中での心理的な関係を議論したい。組織の経営の背後には、経営者と従業員の「人間の気持ち」(人文科学的概念)があり、それを介在して実践されている。
午後には企業倫理・企業文化の問題を扱う。多くの企業で繰り返し起してきている不祥事も、当然のことながら、リスクマネジメントの対象である。特に企業文化・企業倫理などの、ここでいう組織精神性と経営者の関係した不祥事の問題を、【4】論考「企業文化の有効性と経営者責任の法制化」に基づいて議論する。なかでも、組織精神性資産(理念、倫理、文化等人間の気持ちに作用して、組織の活性化や沈滞化などに影響を与える組織の資産)と、経営者責任のあり方に焦点をあてる。
経営学など、いわゆる社会科学的な組織論の視点からの議論は、ともすると組織のヒューマンファクター(人文科学的要素)の視点を見逃し、価値創造能力・生産性に大きな影響を与える重要な要因を無視して、戦略論や組織論についての議論を展開する。企業文化の退廃が、従業員への「気持ち」に作用し、企業の革新性にも影響して、競争力下落の可能性を高める。また、不祥事は、外部リスクとしてブランド価値毀損をもたらし、顧客により評価を通して売上高(価値)毀損が起こるし、それが結果として従業員のモラルハザードにつながることが多い。
この大きな不祥事リスクマネジメントには、本来的にトップがかかわる問題であるが、トップが直接的にかかわっていても、「おらぁー知らんぞ」となると、リスクを抑制する手段がなくなる。この授業では事例として、神戸製鋼所の2017年の不祥事を取り上げる。授業では、日本的経営として有名な「従業員主権」経営の問題についても議論する。
日本では、不祥事が起こると、当該企業のカネを使ってコンサルを依頼し、検証委員会を設置し、そして報告書がでて、今後の方向だけを述べて、終わりとなることを繰り返している。結果としては、国家の視点から見るとゆっくりと価値競争力を失ってきた。最近の例では、日本郵政、レオパレス、スルガ銀行、関西電力など枚挙にいとわない。松下幸之助のいう「企業は公器」(従業員からは生存の基盤、将来世代にとっては雇用の基盤、国家にとっては法人税と所得税の税収の基盤、技術革新の基盤など)を肝に銘ずべきであろう。
周知のように、ビジネスをするとはリスクをとり、常に不確実性(リスク・チャンス)の中から価値を創造することでしかない(No uncertainty, no business)。ビジネスの世界でのRMでは、リスク対応への視点は、リスクの内容と企業風土、企業の置かれている状況、保有する資源、組織と権限委譲の関係、経営トップの判断、などに応じて、多様な思考法、知識、あるいは倫理的な判断を必要とする。特に戦略的リスクや、危機リスク、コンプライアンス・リスクに関して、そのような問題が起きることもある。その例は、いわゆる組織がらみの不祥事の隠蔽などがその例である。
この思考法と必要なスキルを書いた、【1】「事業リスクマネジメントの考え方と実際」で最初にレクチャーする。そこでは、RMの基礎概念、RMプロセス、RMの諸方法について学習する。そのあと予備レポートで準備してきた【2】ケース「ムサシ薬品中州店の悩みと本社のリスクマネジメント」を利用して、その店の
リスクマップ(発生頻度(確率)vs影響度の2次元マップ)と、
保有リスク構造マップ(コアリスク・ノンコアリスクvs内部・外部リスクの2次元図)、
リスク対応法
を議論する。午後には、同じ資料で、ムサシ薬品本社のリスク分析でのリスクについての理解と彼らのリスク対策法について議論する。
2日目の午前・午後では、企業の不祥事に関係する、企業文化・倫理・理念、企業風土など、組織精神性に関係したリスク・ファクターとその内容について議論する。
最初に【3】ケース「松下電器産業の変革」と補助資料②を利用してこの問題を議論する。90年代末期に「松下電器の変革」に導いた原因は、経営者のみが対応可能なエンパワーメントに関わる、経営文化リスクであり、そのリスクにリアクティブに対応したのが中村革命である、とみることができる。実際、ジャーナリズムは潜在的な内部対立に関係している問題であると、指摘してきた(資料②)。組織は経営陣が組織理念、組織文化的に統一されないと、企業の経営プロセスにいろいろな形でモラルハザードや、サボタージュ、倫理崩壊等とが起こり、不祥事が起こるリスクが高まり、コストが上昇して、価値創造の能力を毀損する。この問題は、難しいが、午後の資料【4】と③により、組織精神性資産(理念、倫理、文化)と不祥事と経営者責任問題と一緒に考えていく。
午前には、創業者が設定した松下電器の文化的基盤、80年代から90年代にかけてその変化、創業者ファミリーと経営者たちとの関係などに絡む組織の中での心理的な関係を議論したい。組織の経営の背後には、経営者と従業員の「人間の気持ち」(人文科学的概念)があり、それを介在して実践されている。
午後には企業倫理・企業文化の問題を扱う。多くの企業で繰り返し起してきている不祥事も、当然のことながら、リスクマネジメントの対象である。特に企業文化・企業倫理などの、ここでいう組織精神性と経営者の関係した不祥事の問題を、【4】論考「企業文化の有効性と経営者責任の法制化」に基づいて議論する。なかでも、組織精神性資産(理念、倫理、文化等人間の気持ちに作用して、組織の活性化や沈滞化などに影響を与える組織の資産)と、経営者責任のあり方に焦点をあてる。
経営学など、いわゆる社会科学的な組織論の視点からの議論は、ともすると組織のヒューマンファクター(人文科学的要素)の視点を見逃し、価値創造能力・生産性に大きな影響を与える重要な要因を無視して、戦略論や組織論についての議論を展開する。企業文化の退廃が、従業員への「気持ち」に作用し、企業の革新性にも影響して、競争力下落の可能性を高める。また、不祥事は、外部リスクとしてブランド価値毀損をもたらし、顧客により評価を通して売上高(価値)毀損が起こるし、それが結果として従業員のモラルハザードにつながることが多い。
この大きな不祥事リスクマネジメントには、本来的にトップがかかわる問題であるが、トップが直接的にかかわっていても、「おらぁー知らんぞ」となると、リスクを抑制する手段がなくなる。この授業では事例として、神戸製鋼所の2017年の不祥事を取り上げる。授業では、日本的経営として有名な「従業員主権」経営の問題についても議論する。
日本では、不祥事が起こると、当該企業のカネを使ってコンサルを依頼し、検証委員会を設置し、そして報告書がでて、今後の方向だけを述べて、終わりとなることを繰り返している。結果としては、国家の視点から見るとゆっくりと価値競争力を失ってきた。最近の例では、日本郵政、レオパレス、スルガ銀行、関西電力など枚挙にいとわない。松下幸之助のいう「企業は公器」(従業員からは生存の基盤、将来世代にとっては雇用の基盤、国家にとっては法人税と所得税の税収の基盤、技術革新の基盤など)を肝に銘ずべきであろう。
In this course, we focus on the theme “business risk management “, which is viewed as a business management process making value. That is, it is a business activity process of maximizing the business value-added (return) by identify, analyzing and evaluating risks and chances contained in uncertainty, and rationally managing the business risk (value-destroying factor) , where risks are retained for value, reduced , transferred or diversified with other risks. Here value-added is defined to be income wage of employees +gross profit + depreciation. As is well known, doing business is nothing but taking risk and value is always created out of uncertainty (risk and chance). In other words, “No uncertainty, No business.”
This kind of thought is first studied together with some skills of finding and evaluating risk. Then students are required to discuss on the case “Owner’s worry of a drugstore ” in view of business risk management, based on our report "Risk Management: thoughts and practices " that is distributed. Then applying the arguments to a drugstore chain, “Musashi Yakuhin”, a risk structure of the chain is analyzed with students, where the risk map and the risk-holding structure map with core-noncore risks along vertical axis and internal-external risks along horizontal axis are derived in class together with some corresponding risk solutions.
On the second day morning we will discuss on the case “Reform of the Matsushita Electric Industry" from a viewpoint of risk management with a focus on its corporate mentality, which is defined with corporate vision, ethics and culture. On the afternoon, we will discuss on why so many Japanese companies repeatedly cause corporate scandals based on the Kariya's paper "Effectiveness of corporate culture and resposibility of management". As such scandal, the Kobelco case in 2017will be analyzed in view of the Japanese mentality context, individual mentality context and corporate mentality context.
This kind of thought is first studied together with some skills of finding and evaluating risk. Then students are required to discuss on the case “Owner’s worry of a drugstore ” in view of business risk management, based on our report "Risk Management: thoughts and practices " that is distributed. Then applying the arguments to a drugstore chain, “Musashi Yakuhin”, a risk structure of the chain is analyzed with students, where the risk map and the risk-holding structure map with core-noncore risks along vertical axis and internal-external risks along horizontal axis are derived in class together with some corresponding risk solutions.
On the second day morning we will discuss on the case “Reform of the Matsushita Electric Industry" from a viewpoint of risk management with a focus on its corporate mentality, which is defined with corporate vision, ethics and culture. On the afternoon, we will discuss on why so many Japanese companies repeatedly cause corporate scandals based on the Kariya's paper "Effectiveness of corporate culture and resposibility of management". As such scandal, the Kobelco case in 2017will be analyzed in view of the Japanese mentality context, individual mentality context and corporate mentality context.
到達目標 / Achievement Goal
本授業の該当ラーニングゴール Learning Goals
*本学の教育ミッションを具現化する形で設定されています。
LG1 Critical Thinking
LG2 Diversity Awareness
LG3 Ethical Decision Making
LG4 Effective Communication
LG5 Executive Leadership (EMBA)
LG7 Global Perspective (GLP)
LG2 Diversity Awareness
LG3 Ethical Decision Making
LG4 Effective Communication
LG5 Executive Leadership (EMBA)
LG7 Global Perspective (GLP)
受講後得られる具体的スキルや知識 Learning Outcomes
まずもって、価値を作る事業リスクマネジメントの基本的知識と考え方とそれを実行するスキル(リスク識別法、リスク分析法、インフルエンスダイアグラム、リスクコントロールなど)がえられる。その基礎となる確率・頻度概念、リスクの影響度の設定の仕方、コア・ノンコアリスクと内部外部リスクの2次元マップなどのリスクの可視化法などスキル。またリスクの分類やリスク対方法などの考え方とリスクマネジメント実践法を学ぶ。
企業経営者が設定する理念や倫理、文化を資産認識して、人文科学的な視点からの組織精神性資産という考え方により、進化対応型の組織精神性資産、トップダウン型経営、ボトムアップ型経営 などについての考え方を学ぶ
企業経営者が設定する理念や倫理、文化を資産認識して、人文科学的な視点からの組織精神性資産という考え方により、進化対応型の組織精神性資産、トップダウン型経営、ボトムアップ型経営 などについての考え方を学ぶ
Among other things, students acquire basic knowledge and thought on value-creating business risk management, which is quite important as promoting risk management in companies. As skills, the following things are learnt: methods on risk identification, risk analysis and risk evaluation, skills on making risk maps, influence diagram, probability/frequency of risk occurrence, severity of risk, visualization of important risks by using core-noncore risk and outer-inner risk mapping.
In addition, the concept of corporate mentality will be studied with applications to the cultural aspect and structure of Japanese management.
In addition, the concept of corporate mentality will be studied with applications to the cultural aspect and structure of Japanese management.
教育手法 Teaching Method
教育手法 Teaching Method | % of Course Time | |
---|---|---|
インプット型 Traditional | 20 % | |
参加者中心型 Participant-Centered Learning | ケースメソッド Case Method | 50 % |
フィールドメソッド Field Method | 30 % | 合計 Total | 100 % |
事前学修と事後学修の内容、レポート、課題に対するフィードバック方法 Pre- and Post-Course Learning, Report, Feedback methods
事前配布資料1の「事業リスクマネジメントの考え方と実際」を学習してきてください。そして25日の授業の前にアサインメントとして指定した事前予習レポートを提出してください。事後調査レポートも提出してください。レポートの内容についての詳細は、アサインメントを見てください。
事前予習レポートの提出日:7月25日 午前9時
提出先:Google Classroomに直接提出
事後調査レポートの提出日:8月5日 午後10時
提出先:takeaki_kariya@nucba.ac.jp
事前予習レポートの提出日:7月25日 午前9時
提出先:Google Classroomに直接提出
事後調査レポートの提出日:8月5日 午後10時
提出先:takeaki_kariya@nucba.ac.jp
授業スケジュール Course Schedule
第1日(Day1)
午前:1)基礎資料「事業リスクマネジメントの考え方と実際」を用いて、事業リスクマネジメントについてのアサインメントについてレクチャーし、その後議論する。事業リスクの識別・分析・評価し、抽出したリスクへの対応として、リスクソリューションへ導くプロセスに関わる考え方とその技術を理解する。リスク分析法の一つとしてのリスクマップ、リスクの因果を理解するインフルエンスダイアグラムなど。
午後 ケースメソッドにより、ケース「ムサシ薬品中州店の悩みと本社のリスクマネジメント」をリスク分析し、その対応を考察する。午前に議論した考え方と分析法を応用利して、クラス参加者と一緒にリスク分析をする。
資料【1】【2】をよく読んできてください。
●使用するケース
【1】基礎資料「事業リスクマネジメントの考え方と実際」(60頁)【2】ケース「ムサシ薬品中州店の悩みと本社のリスクマネジメント」
補助資料① 2004のCOSOERMの枠組み
第2日(Day2)
午前) ケース【3】は、松下幸之助の松下経営の成功とその後の低迷、そして中村社長の下で改革の6年間が始まるその流れを記述している。重要な組織のリスク、会社全体のリスクとして、組織構造、経営陣の統合性、統一性に関わるリスクがあり、そこの部分が大きくかけると企業の価値創造能力は、大きく毀損する。実際、その理解の基礎には、組織統合原理の一つとしてERM(全社的リスクマネジメント)のCOSOの枠組み(資料①))の見方がある。そこでは、ERMの8つの要素のひとつ「内部環境」として、企業理念や、倫理・文化、経営哲学、リスク哲学など人間の精神性に関わる共通性を組織の中に埋め込むことが必要であろう、とみている。人間と組織と組織文化の関係は、人文科学にも関係して難しい領域であるが、この問題を避けて組織の大きな成長性、持続性はあり得ないかもしれない。
資料【3】の内容には、組織構造だけでなく、経営プロセス、経営理念の変革を狙う意図があるように見える。会社の変革とは、これまでのものを新しい理念、ビジネスモデル、生産プロセス、販売プロセスなどで置き換える行為・活動であるから、自らのこれまでのものの中に構造的陳腐化、精神的・文化的陳腐化があると認識しており、中村社長はそれを継続することは松下電器にとって全社的なリスクであるとみていることになろう。そこで、ここではこの視点からこの資料の背景を探り、内在していた問題について議論する。なお資料【3】の「失われた10年」の部分以降を扱う。
午後) 資料【4】では、組織精神性を次のようにみている。
文化や組織精神性資産の重要性を議論するのは、人的資産こそが他の資産・資源を有効に活用して価値創造できるのであり、その人的資産を包摂する企業の組織精神性が活性力(内部精神的エネルギー)であろうと見るからである。企業の精神的空間は文化を基礎にし、文化が人的資産に作用するのと同時に、その結果の活動が文化を活性化し、時に進化に沿う文化、革新を引き起こす文化へと導くからである。しかしそれは、企業文化や理念の設定とそれを忠実に行おうとする経営者の強い意志とプロセスの実践、など精神性に関わるコミュニケーションが企業の中で有効に行われることが必要となる。これは、「企業は人なり」としての人的資源そのものの重要性を述べるものでなく、その精神資産DNAを人的資源のヒューマン性・精神性の中に埋め込んだ組織の活性化能力の重要性をいうのである。
逆にこの組織的精神空間の劣化は大きなリスクである。多くの不祥事を起こした企業はこのリスクを具現化させた企業である。倫理的退廃や、文化の陳腐化、あるいは経営者の意識のレベルの低さなどが、情報漏えいや大きな不祥事・事故の発生、戦略性の欠如となって、価値創造能力が毀損されていく。最近の日常茶飯事的な不祥事・事故の事例の背後にはこのような企業の精神的文化資産の毀損があろう。これはきわめて重要なリスクであり、それへの戦略的かつ全社的な対応が必要である。かつての、内紛、事故や不祥事が相次いだ日本航空の問題は、日本エアシステムとの合併や組合などの問題を通して起きた、文化の劣化に関わる問題であった、という。硬直化した文化腐敗・衝突のまえで経営者は結果として無為であった。その結末は、株主の損失、銀行・投資家の債権の放棄、雇用への大きな影響、税収減少だけでなく税金の投与など、社会的損失と日本の競争力の低下、日本ブランド毀損などの問題に関係している。その意味で、トップの経営者に有効な組織精神性のもとで優れた経営能力を求めること当然であろう。
●使用するケース
【3】ケース「松下電器産業の変革(要約版)(9‐117‐J02)」【4】論考「企業文化の有効性と経営者責任の法制化」
補助資料② 松下電器産業の文化基盤
補助資料③ 「神戸製鋼所の約束」と不祥事
成績評価方法 Evaluation Criteria
*成績は下記該当項目を基に決定されます。
*クラス貢献度合計はコールドコールと授業内での挙手発言の合算値です。
事後調査レポートは第2日の授業で学習した視点を据えながら、個別企業の事例を扱う。詳細はケースブック参照。
*クラス貢献度合計はコールドコールと授業内での挙手発言の合算値です。
講師用内規準拠 Method of Assessment | Weights |
---|---|
コールドコール Cold Call | 0 % |
授業内での挙手発言 Class Contribution | 50 % |
クラス貢献度合計 Class Contribution Total | 50 % |
予習レポート Preparation Report | 20 % |
小テスト Quizzes / Tests | 0 % |
シミュレーション成績 Simulation | 0 % |
ケース試験 Case Exam | 0 % |
最終レポート Final Report | 30 % |
期末試験 Final Exam | 0 % |
参加者による相互評価 Peer Assessment | 0 % |
合計 Total | 100 % |
評価の留意事項 Notes on Evaluation Criteria
予習レポートは、授業参加前の理解であるから、アサインメントについて十分勉強してきたかの評価部分を大きくする。事後調査レポートは第2日の授業で学習した視点を据えながら、個別企業の事例を扱う。詳細はケースブック参照。
教科書 Textbook
- ー「使用なし」ー(ー)
参考文献・資料 Additional Readings and Resource
教科書は使用しない。授業ではケースを用いるが、受講生には次の参考資料が配布されるのでそれを読んでくること。
ノート:事業リスクマネジメントの考え方と実際
<参考文献・資料>
1.「リスク評価手法の内部監査での25の活用事例」日本内部監査協会2016 (無料ダウンロード可能) file:///F:/RM2020/内部監査協会RMa03_1611.pdf
2.経産省産業資金課編(2005)『先進企業から学ぶ事業リスクマネジメント』経済産業調査会(無料ダウンロード可能) https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1009673 これは事務的なハウツーの側面が強く、その意味で実際的。
3.ウォーカー・シェンカー・バートン著(刈屋監訳)(2003)『戦略的事業リスク経営‐ノーリスク・ノーマネジメント』東洋経済新報社
4、バートン・シェンカー・ウォーカー著(刈屋・佐藤・藤田訳)(2003)『収益を作る戦略的リスクマネジメント―米国優良企業の成功事例』東洋経済新報社
5.日本内部監査協会(2008)『COSO全社的リスクマネジメント 』同文館
ノート:事業リスクマネジメントの考え方と実際
<参考文献・資料>
1.「リスク評価手法の内部監査での25の活用事例」日本内部監査協会2016 (無料ダウンロード可能) file:///F:/RM2020/内部監査協会RMa03_1611.pdf
2.経産省産業資金課編(2005)『先進企業から学ぶ事業リスクマネジメント』経済産業調査会(無料ダウンロード可能) https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1009673 これは事務的なハウツーの側面が強く、その意味で実際的。
3.ウォーカー・シェンカー・バートン著(刈屋監訳)(2003)『戦略的事業リスク経営‐ノーリスク・ノーマネジメント』東洋経済新報社
4、バートン・シェンカー・ウォーカー著(刈屋・佐藤・藤田訳)(2003)『収益を作る戦略的リスクマネジメント―米国優良企業の成功事例』東洋経済新報社
5.日本内部監査協会(2008)『COSO全社的リスクマネジメント 』同文館
授業調査に対するコメント Comment on Course Evaluation
2020年4月から初めてNUCBビジネススクールでリスクマネジメント、ファイナンスの科目を担当します。私の授業について積極的なフィードバックを期待しています。互いに啓発しましょう。
担当教員のプロフィール About the Instructor
疑いもなく、私たちの時代は、大きな進化の過程の中にあります。その進化は、私たちの社会を豊かにしていく一方、リスク・不確実性を拡大させていきます。その進化を促す要因は、私たちの幸せへの希求でもあり、それを実現していくのは広い意味での新しい知識と資本でしょう。新しい知識を生産しない企業や国は持続的成長力・競争力を失っていきます。
私の担当科目は、TAPエンタープライズ・リスクマネジメント、MBAリスクマネジメント、MBAファイナンスです。共通のテーマは、リスクとチャンスから価値を創りだす思考法です。私のコースを履修することで、ぜひその思考法を身に着けていただきたい。「自分を変える、自分は変わる」思考法でもあります。価値創造を目指す企業活動は、自己変革の継続こそが、自己の持続性を確保する道でしょう。企業を取り巻く経営環境は、技術革新、市場変化、規制・制度変化、需要の変化、競争、国内・国際政治変化、気候変動など外部変化・進化のみならず、企業内部の派閥対立、文化・倫理の退廃、ガバナンスの崩壊、内部の意思疎通の崩壊など、きわめて多岐にわたります。これらのリスク・チャンスを実際の価値に変換していくのは、具体的なアイデアや工夫、革新であり、それが成功した時には新しい知識になるでしょう。互いに啓発しあって、一緒に変わっていきましょう。
一橋大学経済学修士。ミネソタ大学統計学部Ph.D. 九州大学理学博士。一橋大学名誉教授。米国数理統計学会フェロー。日本統計学会賞、日本金融・証券計量・工学学会賞、日本不動産金融工学学会賞、受賞。
職歴:一橋大学経済研究所教授、みずほ第一フィナンシャルテクノロジー理事、京都大学経済研究所・金融工学研究センター長、明治大学専門職大学院ビジネススクール・研究科長、城西国際大学特任教授を経て現在。客員ポストとして、 ロンドンスクール・オブ・エコノミックス、ピッツバーグ大学、ラトガース大学、シカゴ大学・ビジネススクール、等客員教授。経済企画庁経済研究所客員主任研究官、日本銀行金融研究所客員研究官、経済産業研究所ファキュリティフェロー、内閣府景気動向指数研究会委員、財務省財務総合政策研究所40年国債発行研究会委員長等。
日本金融・証券計量・工学学会(ジャフィー)、日本不動産金融工学学会(ジャレフ)、日本保険・年金リスク学会(ジャリップ)、日本価値創造エンタープライズ・リスクマネジメント(ERM)学会、の4学会設立会長。 日本経済学会誌、日本統計学会誌、Mathematical Financeの編集長、副編集長経験
【専門領域】統計学、ファイナンス、金融工学、経済学、経営学、リスクマネジメント、不動産分析。
最近の著書に刈屋・小林・清水(2017)『賃貸・分譲住宅の価格分析法の考え方と実際』プログレスなど、多数。
私の担当科目は、TAPエンタープライズ・リスクマネジメント、MBAリスクマネジメント、MBAファイナンスです。共通のテーマは、リスクとチャンスから価値を創りだす思考法です。私のコースを履修することで、ぜひその思考法を身に着けていただきたい。「自分を変える、自分は変わる」思考法でもあります。価値創造を目指す企業活動は、自己変革の継続こそが、自己の持続性を確保する道でしょう。企業を取り巻く経営環境は、技術革新、市場変化、規制・制度変化、需要の変化、競争、国内・国際政治変化、気候変動など外部変化・進化のみならず、企業内部の派閥対立、文化・倫理の退廃、ガバナンスの崩壊、内部の意思疎通の崩壊など、きわめて多岐にわたります。これらのリスク・チャンスを実際の価値に変換していくのは、具体的なアイデアや工夫、革新であり、それが成功した時には新しい知識になるでしょう。互いに啓発しあって、一緒に変わっていきましょう。
一橋大学経済学修士。ミネソタ大学統計学部Ph.D. 九州大学理学博士。一橋大学名誉教授。米国数理統計学会フェロー。日本統計学会賞、日本金融・証券計量・工学学会賞、日本不動産金融工学学会賞、受賞。
職歴:一橋大学経済研究所教授、みずほ第一フィナンシャルテクノロジー理事、京都大学経済研究所・金融工学研究センター長、明治大学専門職大学院ビジネススクール・研究科長、城西国際大学特任教授を経て現在。客員ポストとして、 ロンドンスクール・オブ・エコノミックス、ピッツバーグ大学、ラトガース大学、シカゴ大学・ビジネススクール、等客員教授。経済企画庁経済研究所客員主任研究官、日本銀行金融研究所客員研究官、経済産業研究所ファキュリティフェロー、内閣府景気動向指数研究会委員、財務省財務総合政策研究所40年国債発行研究会委員長等。
日本金融・証券計量・工学学会(ジャフィー)、日本不動産金融工学学会(ジャレフ)、日本保険・年金リスク学会(ジャリップ)、日本価値創造エンタープライズ・リスクマネジメント(ERM)学会、の4学会設立会長。 日本経済学会誌、日本統計学会誌、Mathematical Financeの編集長、副編集長経験
【専門領域】統計学、ファイナンス、金融工学、経済学、経営学、リスクマネジメント、不動産分析。
最近の著書に刈屋・小林・清水(2017)『賃貸・分譲住宅の価格分析法の考え方と実際』プログレスなど、多数。
Takeaki KARIYA is a professor of finance, risk management and ERM at NUCB Business School.
No doubt, our era is in the process of great evolution. While the evolution will make our society better off, it will also expand uncertainties (risk & chance) therein. One of the factors that promote the evolution is our sincere wish for happiness and peace, and the power that makes it realized will be our knowledge in a broad sense and capital. No enterprise or even country that cannot create new knowledge will obtain its sustainability and competitive power.
I take the subjects in charge; enterprise risk management, business risk management and finance. A common theme in these subjects is a thought of creating value out of evolution, risk and chance or equivalently uncertainty. By taking my courses, I hope you will acquire this thought for making your carrier in future. It is the thought on “why and how you need to change yourself and you naturally get changed”. In the activities seeking value creation, only the companies that constantly manage the confronting important uncertainties and reform themselves will be entitled to pursue their sustainability and growth. The uncertainties are of such varieties as the external ones of technology, market, competition, demand, economic environment, regulation, etc. and the internal ones of corporate culture and ethics, internal conflicts, corporate governance, etc. Managing those risks and chances and transforming them into a value is nothing but concrete and specific ideas, schemes, plans, and sometimes innovative thoughts. When successful, it will be knowledge for the organization. Let us enlighten each other and create our knowledge in class.
In the past, Takeaki KARIYA served as professors at Institute of Economic Research of Hitotsubashi University, Institute of Economic Research and Financial Engineering Center of Kyoto University, Business School (Dean) of Meiji University and Josai International University. In addition, he worked as a research director for Mizuho Dai-ichi Financial Technology, a subsidiary of Mizuho Bank. He was also a visiting professor of London School of Economics, Business School of University of Chicago and Rutgers University among others.
He was the founding president of the four academic institutions; Japanese Association of Financial Econometrics & Engineering, Japanese Association of Risk, Insurance and Pension, Japanese Association of Real Estate Financial Engineering, and Japanese Association of Value-Creating Enterprise Risk Management (ERM).
In research, he was individually ranked the 24th in Annals of Statistics and the 45th in the total of 9 academic journals, which appeared as an article; P.C.B. Phillips, et al (1988) "Worldwide Institutional and Individual Rankings in Statistical Theory by Journal Publications over the Period 1980-1986" Econometric Theory, 4,1-34.
He was elected as a fellow of Institute of Mathematical Statistics (US) and received the Awards of Japan Statistics Society, Japanese Association of Financial Econometrics and Engineering, and Japanese Association of Real Estate Financial Engineering.
Specialized Field
Statistics, Econometrics, Economics, Finance, Financial Engineering, Risk Management, Enterprise Risk Management, Real Estate Analysis
Academic Background
Ph.D. Statistics (University of Minnesota), Dr. Mathematics (Kyushu University)
Publications
Kariya, T. and Liu, R. (2003) Asset Pricing, Springer, Boston
Kariya, T. and Kurata, H. (2005) Generalized Least Squares, John Wiley, London
Kariya, T. (1993) Quantitative Methods for Portfolio Analysis, Kluwer Academic Publishers (Now Springer), Boston.
Kariya, T. and Sinha, B. K. (1988). The Robustness of Statistical Tests. Academic Press, New York.
Research Papers
[1] Kariya, T., Y. Yamamura, K. Inui (2019). Empirical Credit Risk Ratings of Individual Corporate Bonds and Derivation of Term Structures of Default Probabilities Journal of Risk and Financial Management 2019, 12, 124(1-29)
[2] Kariya, T. and Kobayashi, Y. (2019). An overview over hedonic price analyses on rental condominiums and for-sale condominiums. Journal of Japanese Association of Real Estate Financial Engineering 11,1,1-8.
[3] Kariya, T. and Kobayashi, Y. (2018). Variable selection and multi- collinearity problems in hedonic price regression analysis for rental and for-sale houses. Journal of Japanese Association of Real Estate Financial Engineering 10,1,10-18
[4] Kariya, T. (2017). Effectiveness of corporate culture and legislation of management responsibility associated with case of Kobe Steel, Ltd. JARIP Journal.
[5] Kariya, T. (2017). Management and value-creating ERM—Case of shopping center. Proceedings of 10-year Commemorative Symposium JAVCERM.
[6] Kariya, T., Y. Tanokura, H. Takada, and Y. Yamamura (2016). Measuring Credit Risk of Individual Corporate Bonds in US Energy Sector. Asia-Pacific Financial Markets 23: 229–62.
Refereed Articles
- (2019) Empirical Credit Risk Ratings of Individual Corporate Bonds and Derivation of Term Structures of Default Probabilities. Journal of Risk and Financial Management 2019, 12, 124(1-29) 12(3):
- (2019) An overview on Empirical Hedonic Analyses for Pricing Rental Condo Units or Houses for sale.. Journal of Japanese Association of Real Estate Financial Engineering 11
- (2018) Variable Selection and Multicollinearity Problems In Hedonic Regression Analyses for Pricing Rental Condo Units or for-sale Houses.. Journal of Japanese Association of Real Estate Financial Engineering 10
- (2017) Effectiveness of corporate culture and management responsibility--Focusing on the case of KOVELCO Scandal. Jouranal of the Japanese Association of Risk, Insurance and Pensions 9
- (2016) A Dynamic Bond Pricing Model with Application to the Japanese Government Bonds. Annual review of economics 32 09108602
Refereed Proceedings
- (2021). Why ERM is not adopted in Japanese management under company system--- Example of Panasonic case. The Japanese Association of Value Creating Enterprise Risk Management .The 15th Annual JAVCERM Meetingl. 3. 1. Tokyo