シラバス Syllabus

授業名 Strategy and Innovation in Emerging Markets
Course Title Strategy and Innovation in Emerging Markets
担当教員 Instructor Name 藤岡 資正(Takamasa Fujioka)
コード Couse Code BIP207_G22T
授業形態 Class Type 講義 Regular course
授業形式 Class Format On Campus
単位 Credits 2
言語 Language JP
科目区分 Course Category 応用科目200系 / Applied
学位 Degree MBA
開講情報 Terms / Location 2022 GSM Tokyo Fall

授業の概要 Course Overview

Misson Statementとの関係性 / Connection to our Mission Statement

 成長著しい新興国市場は大きな可能性を秘めていることから世界中から注目を集めている。なかでも、新興国アジアは日系企業をはじめ多くの先進国企業が進出しており、新興国アジアにおける事業展開は経営(学)のフロンティアでもある。しかし、こうした国々は可能性と同時に、社会的、制度的、政治的、経済的な課題も多く抱えていることも事実である。つまり、フロンティアスピリットを備え社会問題の解決を図るイノベーティブで倫理観あるリーダーが求められており、新興国市場における戦略やイノベーションを理解することは、ビジネスリーダーにとって不可欠となる。
The fast-growing emerging markets are attracting attention from all over the world due to their great potential. In particular, expanding business into emerging Asia is the frontier of management (study) as many companies from advanced countries including Japan have already developed their business. However, it is also true that those emerging countries hold many social, institutional, politial and economic issues as well as potential. In other words, there is a need for innovative and ethical leaders who are equiped with a frontier spirit and strive to solve social problems. Understanding strategies and innovations in emerging markets is essential for business leaders.

授業の目的(意義) / Importance of this course

 現在日本企業の多くは、何らかの形で海外と接点を有しており、グローバル化の進展は、情報技術の発展とともに急速に進んできた。なかでも、近年、アジア新興諸国の社会・経済の発展のスピードは目覚ましく、これらアジア新興国の現状を体感的に把握しておくことは有意義なことである。本クラスでは、新興国市場の動向を理解するのみではなく、新興国市場特有の経営上の課題やそうした市場におけるイノベーションについて理解を深めていく。従来のものづくりの海外進出から、現地の市場の開拓を目指した海外進出が増えているなか、ものづくりの拠点としてのアジアではなく、世界の市場としてのアジア、そしてイノベーションの創出拠点としてのアジアの可能性について理解を深めていく。
While many Japanese companies have some contacts with foreign countries these days, globalization has progressed rapidly according to the development of information technology. In particular, the speed of social and economic development in emerging Asian countries has been remarkable in recent years, and it is meaningful to grasp the current situation in those countries. In this class, we will not only understand trends in emerging markets, but also deepen our understanding of management issues specific to emerging markets and innovations in those markets. The number of overseas expansions aimed at developing local markets increases while the conventional overseas expansion decrease. We will deepen our understanding of the potential of Asia which is the market for the world and creates innovation creating hub.

到達目標 / Achievement Goal

 本クラスを通じて、新興国特有の理論やフレームワークの習得に加えて、アジア新興国のなかでもアセアン地域の地政学的重要性、新興国市場と先進国市場における事業の相違点、異文化理解能力、国境を越えて事業をするということの意義、違いを所与としてものごとを進めるための態度や姿勢などについて、多くの事例を通して理解することができる。こうした新たな視角を通じて、企業経営のみならず、それぞれの人生の意義やビジネススクールで学ぶことの意義などについて再認識をする。

By taking this course, students can understand not only theories and framework peculiar to emerging countries, but also geopolitial importance of the ASEAN, the differences in business between emerging economies and advanced economies, ability to understand cultural differences, the importance of doing business across the national borders, and an attitude to proceed things given the difference through many case studies. From these new perspectives, we will re-recognize not only corporate management but also the significance of each life and the importance of learning at a business school.

本授業の該当ラーニングゴール Learning Goals

*本学の教育ミッションを具現化する形で設定されています。

LG1 Critical Thinking
LG2 Diversity Awareness
LG3 Ethical Decision Making
LG4 Effective Communication
LG5 Executive Leadership (EMBA)
LG6 Innovative Leadership (MBA)
LG7 Global Perspective (GLP)

受講後得られる具体的スキルや知識 Learning Outcomes

 本クラスでは、新興アジアにおけるビジネスの環境変化を読み取り、国際経営の基礎知識(フレームワーク、分析ツール、そして組織統制手法など)を学習しながら、ケースディスカッションを交えて、企業経営者が直面している課題を認識し、それぞれの経営環境下で正しく問いを立てる力を養成する。新興国市場の理解を目的としたレクチャーに加え、ケースメソッドを用いたParticipant Centered Learningを中心として、論理的思考力・戦略構想力・課題発見力・ビジネスコミュニケーション能力を培いながら、新興国ビジネスに求められる理論や分析枠組みを受動的に学ぶのみならず、ケーススタディを通じた双方向型のディスカッションを通じて(論理的思考能力の養成)、自らのものの見方を相対化したり(異文化理解の養成)、内省を促す場を提供するとともに、対話を通じて(伝える力の養成)、組織運営に必要な能力開発をしていく。

Prime purpose of this course is that participants (1) understand the environment of global business, (2) learn fundamentals of international management (including analytical tool and organizational control etc.), (3) identify challenges that business leaders face through case studies and (4) develop ability to make questions correctly under any business circumstances.

SDGsとの関連性 Relevance to Sustainable Development Goals

Goal 4 質の高い教育をみんなに(Quality Education)

教育手法 Teaching Method

教育手法 Teaching Method % of Course Time
インプット型 Traditional 20 %
参加者中心型 Participant-Centered Learning ケースメソッド Case Method 0 %
フィールドメソッド Field Method 80 %
合計 Total 100 %

事前学修と事後学修の内容、レポート、課題に対するフィードバック方法 Pre- and Post-Course Learning, Report, Feedback methods

 予習にかけるべき時間、事前に必要な知識等、受講にあたり前提条件:課題に関して、自分の感想を簡潔にまとめておくこと。また、ケース課題がある場合は、事前にしっかりとケースを読み込んでおくこと。授業中に不意に発言を求められることがあるので、それに備えること。
*受講者は海外勤務経験を有していたり、国外での事業に関心を有する方が望ましい。

授業スケジュール Course Schedule

第1日(Day1)

テーマ:新興国市場における戦略とイノベーション入門
概 要:新興国市場をめぐる競争では、欧米諸国や日本のような先進国で発展した古いビジネスルールと多くの管理手法は、もはや適用されず、さまざまな競争力のあるゲームプランが採用されている。新興国市場では「異なる考え方」が求められ、新しいビジネスモデル、価値体系、競争優位は世界中に広がっている。講義の初日では、新興市場のダイナミクスを理解し、この新しい世界秩序で勝つために必要なものについて考えていく。

ディスカッションポイント:
• 新興国市場とは何か?
• 新興国市場はなぜ重要なのか?
• 新興国市場の潜在性を評価するための視角とは何か?

●使用するケース
Honda (A) (B) Harvard Business School Case 384-049, August 1983. (Revised March 2011.)

第2日(Day2)

テーマ:新興国におけるイノベーション戦略
概要:ここ数十年で、企業のイノベーションの実行方法に大きな変化が見られるようになった。これには、イノベーションプロセスの変更、イノベーション活動をアウトソーシングする柔軟性、そして最も重要なこととして、イノベーションの場所が含まれる。その背景には主に2つの新しいトレンドがある。1つは、一部の発展途上国における多国籍企業(MNC)によるグローバルな戦略的研究開発の立地と、もう一つは、最近では、新興国の一部の企業も、グローバル市場向けの製品とサービスの研究開発を開始しているということである。
 講義二日目では、現状の世界のイノベーションの勢力図を理解し、経済と技術のインタラクティブな変化を促進するダイナミックなビジネス環境について考えていく。

ディスカッションポイント:
• R&Dのグローバリゼーションとは何か?
• 新興国でグローバルなR&Dを実現させるための要件は何か?

●使用するケース
イノベーションとリノベーション〜革新と刷新(IMD-5-0543-JP)

第3日(Day3)

テーマ:リージョナル戦略:新興国ビジネスの現状と課題
概 要:グローバル経営の背景と理論的枠組みを用いて、新興アジア諸国を中心とする、日系企業の地域事業戦略に関する理解を深めていく。企業を取り巻く経営環境は、グローバル化によって益々それぞれの国や地域の結びつきが高まると同時に、一方で、ブロック経済化によって地域経済化が進展しており、企業の経営者は、経営学の枠組みのみならず、企業を社会的・制度的・組織的実践として理解していく能力が求められている。そこで、講義三日目では、国際ビジネスの全体像を理解した後、グローバルとローカルの中間にあるリージョナルという視点から、タイを中心とするメコン地域の地政学的・地経学的な重要性を理解していく。また、ING保険のケーススタディーを通じて、安定した経営下での組織変革の難しさや地域事業戦略を実践に移す際に求められる組織構造やコントロールシステムの在り方についてディスカッションしながら、グローバル経営の本質に迫っていく。

ディスカッションポイント:
• 新興国ビジネスは、先進国における事業展開と何が異なるのか?
• グローバリゼーションへの対応とローカライゼーションへの対応のバランスをいかに図るのか?
• I-Rグリッドの貢献と実務で利用する際の問題点とは?
• 戦略提携は何を意味し、企業はアライアンスの異なるステージでプロジェクトをどのように管理するのか?
• 日本とメコン諸国の戦略的互恵関係の構築とは?

●使用するケース
アコーホテルズとデジタル変革:カスタマージャーニーに沿ったコンテンツ 戦略で
カスタマー・エクスペリエンスを豊かにする(12/2018-6241)

第4日(Day4)

テーマ:リージョナルリーダーの要件
概 要:コロナ感染症によって私たちの社会・経済生活は甚大な影響を受けております。問われるべきは、ポスト・コロナの社会・経済がどうなるのか、国境を跨いだグローバル経済の果実を誰が得るのかではなく、いかなる社会・経済を実現したいのかという自らのあり方であり、そこから立ち現れる経営観によって照射され得る企業活動のあるべき姿である。世界を震撼させた感染症の拡大は、生活社会あっての経済であって、経済のための生活ではないということを改めて私たちに問いかけたといえるのではないだろうか。経済的指標には決して収斂されることのない「価値」へ私たちはどのように向き合うか、これが問われている。受講者は、「学ぶ機会を与えられたもの」としての役割を自覚し、半径10メートルあるいは自らが属する組織の関係性を超えて、世界を「想像しする(imagination)」ことのできる力を醸成していかなくてはならない。人間には他者に共感する力(empathy)が備わっている。講義最終日では、これまでの学びを通じて、実際に目で見たもの、経験したこと以外からも、世界を想像し、社会的弱者に共感し、新たな世界を構築していく力を醸成していく。

ディスカッションポイント:
• 変わらない企業経営の本質とは何か?
• ポストコロナのリスクマネジメントとは?
• 非連続な変化における経営戦略とは?

第5日(Day5)



第6日(Day6)



第7日(Day7)



成績評価方法 Evaluation Criteria

*成績は下記該当項目を基に決定されます。
*クラス貢献度合計はコールドコールと授業内での挙手発言の合算値です。
講師用内規準拠 Method of Assessment Weights
コールドコール Cold Call 5 %
授業内での挙手発言 Class Contribution 40 %
クラス貢献度合計 Class Contribution Total 45 %
予習レポート Preparation Report 5 %
小テスト Quizzes / Tests 0 %
シミュレーション成績 Simulation 0 %
ケース試験 Case Exam 0 %
最終レポート Final Report 50 %
期末試験 Final Exam 0 %
参加者による相互評価 Peer Assessment 0 %
合計 Total 100 %

評価の留意事項 Notes on Evaluation Criteria

 新興国市場のマネジメントに「正しい」答えは存在しませんので、皆さんの積極的なご発言を期待しています。

使用ケース一覧 List of Cases

    ケースは使用しません。

教科書 Textbook

  • 藤岡資正「新興国市場と日本企業」同友館(2018)
  • 藤岡資正「日本企業のタイプラスワン戦略」同友館(2015)

参考文献・資料 Additional Readings and Resource

(1) リーディング教材
Bartlett and Beamish, P.W. (2011). Transnational Management: Text, Cases and Readings in Cross-Border Management, McGraw Hill, CH 1, 2, and 3
Friedman, T. (2007). The World is Flat: A Brief History of the Twenty-first Century, Macmillan/Picador Press.
Ghemawat, P. (2007). Redefining Strategy: Crossing Borders in a World Where Differences Still Matter, Harvard Business School Press.
Ghemawat, P. (2001). “Distance Still Matters: The Hard Reality of Global Expansion,” Harvard Business Review, September.
Gupta,A.K., Wakayama,T. and Rangan, U.S. (2012). Global Strategies for Emerging Asia, Jossey-Bass.
Khanna, T., Palepu, K. G. and Sinha, J.(2006). “Strategies That Fit Emerging,” Harvard Business Review.
Khanna, T. and Palepu,K.G. et al. (2010). Winning in Emerging Markets : A Road Map for Strategy and Execution. Boston, Mass., Harvard Business Press.
Nikkei Asian Review “UNIQLO’s Ambition”, Oct 27-Nov 2 2014.
Tongurai, J. and Fujioka, T. (2017). “Thailand-Plus-One Strategy: Practices of Japanese Firms in the Greater Mekong Subregion,” FIIB Business Review, Volume 6 Issue 4, pp. 3-9.

(和文献)
大泉啓一郎(2013)「タイプラスワンの可能性を探る」『環太平洋ビジネス情報』Vol.13 (51)
大滝令嗣(2016)「アジアのエリートは、なぜ日本企業で働きたくないのか?」Diamondハーバードビジネスレビュー(ウェブ記事)http://www.dhbr.net/articles/-/4185
吉川克彦(2015)「文化・制度の違いとリーダーシップ」国際経営研究の現場から、リクルートマネジメントソリューション、https://www.recruit-ms.co.jp/issue/column/0000000168/

(2) ビデオ教材
Ghemawat on Ted “Semi-Globalization” (debate on globalization)

*この他に例題、事例、エクササイズを組み込みながらクラスディスカッションに加えて、体験型の学習を促進していく。また、クラス内での問いかけを通じて、課題発見型学習を促し、それぞれの文脈に応じて、正しく問いを立てていく力を養成していく。

授業調査に対するコメント Comment on Course Evaluation

特になし。

担当教員のプロフィール About the Instructor 

藤岡資正(経営学博士)
名古屋商科大学大学院客員教授、明治大学専門職大学院専任教授、早稲田大学ビジネススクール客員教授、チュラロンコン大学サシン経営大学院日本センター所長

 2013 年度より、本学で客員教授を務める。サシン経営大学院では、2010 年から2015 年にかけてMBA プログラム専攻長・エグゼクティブディレクターを務め、現在は付属日本センター所長及び同校経営委員会のメンバーを務める。その間、ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院(受入教授は元ケロッグ学長(現CEIBS学長)のディパック・ジェイン教授)にて客員研究員を務め、2015 年度より早稲田大学大学院客員准教授、2018年4月から明治大学に奉職。

 これまで数多くのコンサルティング・プロジェクトをリードし、経済産業省(METI)、国際協力機構(JICA)、日本貿易振興機構(JETRO)、海外産業人材育成協会(AOTS)、日本商工会議所、コーポレイトディレクション(CDI)社、日経BP 社、日本能率協会コンサルティング(JMAC)、三菱総合研究所などの機関と協力して数多くの日系企業の海外進出を支援。また、国内外の経営大学院に加え、日本生産性本部、日本能率協会、グロービス、セルム、日本経済新聞社、東芝、IHI、京都銀行、日経BP、NNA などの機関と経営トップセミナーを共催し、これまでに700 社を超える企業の経営幹部が参加している。戦略コンサルティングファームであるコーポレイトディレクション社(CDI)、積水化学工業、神姫バスグループ、IHIなど多くの上場企業の経営顧問を兼任し、神姫バスインターナショナル取締役(非常勤)、積水ハイム不動産取締役(非常勤)を勤める。著書・学術論文に加えて、実務家向け雑誌、政策支援報告書、各種メディア・雑誌において各種提言を行う。日本経済新聞社、産業経済新聞、Bloomberg Business Review、 Asia Pacific Management Journal、Bangkok Post, Nation, NNA(共同通信グループ)などに数多くの記事を寄稿。2014 年から姫路市の観光大使を務め、日本国内への観光客誘致の取り組みと地域活性化を推進しており、2018年度よりファミリービジネスのアジア展開支援を本格化する。

 日本語での著書・共著書・共訳書は、『新興国市場と日本企業』(2018年、同友館)『日本企業のタイ+ワン戦略』(2015年、同友館)、『タイの経営・日本の経営』(2015年、カナリアコミュニケーションズ)、『タイビジネスと日本企業』(2012年、同友館)、『戦略をコントロールする:管理会計の可能性』(2008年、中央経済社)、『社会組織を構築する会計』(2003年、中央経済社)、『現代企業論』(2008年、実教出版社)などがある。


Refereed Articles

  • (2020) On the Ground Research Concerning Nikkei House Makers’ New Rising Market: The Sustainability of Practical Strategy Approaches. The Japan Academy for Asian Market Economies Annual Report 23
  • (2017) Thailand-Plus-One Strategy: Practices of Japanese Firms in the Greater Mekong Subregion. FIIB Business Review 6(4): 2319-7145
  • (2016) Identifying the Missing Links: Enhancing Regional Connectivity of Mekong Countries amidst Demographic Transition . Sasin Journal of Management 20(1):
  • (2013) Exploring Current Status of the Usage of Business Simulation Games in Thai's Business School. Management Review 14
  • (2013) A framework for achieving competitive advantage with lifetime customer management,. Sasin Journal of Management 18(1):






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