シラバス Syllabus

授業名 Business Succession & Innovation
Course Title Business Succession & Innovation
担当教員 Instructor Name 落合 康裕(Yasuhiro Ochiai)
コード Couse Code BIP106_G20T
授業形態 Class Type 講義 Regular course
授業形式 Class Format
単位 Credits 2
言語 Language JP
科目区分 Course Category
学位 Degree MBA
開講情報 Terms / Location 2020 GSM Tokyo Spring

授業の概要 Course Overview

Misson Statementとの関係性 / Connection to our Mission Statement

授業の目的(意義) / Importance of this course

 本講義の目的は、日本のファミリービジネスの現代的意義を議論することである。具体的には、100年以上にわたり同族経営を続けてきた老舗企業を対象に企業家活動(イノベーションの発露)の視点から長期存続のダイナミズムについて考察を深めていくことである。

 当初、経営学はファミリービジネスの企業形態を脱皮した株式公開企業に主な研究関心を寄せてきた。他方、世界的にファミリービジネスに対しての再評価がなされてきている。日本においても、ビジネススクールなどで「事業承継コース」や「ファミリービジネスコース」が設置されるなど関心が高まってきている。

 しかし、日本は老舗企業(その殆どがファミリービジネス)の数が世界一を誇り研究資源の宝庫であるにもかかわらず、欧米と比較すると議論の蓄積は浅い。これまで経営学の傍流におかれてきたファミリービジネスについて、その現象を特殊性や固有性で解釈するのではなく、むしろその特質を理解し積極的意味と消極的意味を議論して理解を深める必要があろう。

 本講義では、ファミリービジネス研究において最も重要な課題とされてきた事業承継の事例に焦点を当てて、ファミリービジネスの企業家活動について多元的、多角的、時間経過的に分析していく。また、講義の一部において、非ファミリー企業の事例と比較ケーススタディを行うことで、ファミリービジネスの特質を如実に明らかにする。本講義を通じて、受講生は実践的知識の獲得に留まることなく、思考力ならびに知識の運用能力の養成を図ることができるであろう。
The purpose of this lecture is to discuss the significance of Japanese family business, which is to deepen consideration on long-term dynamism from the viewpoint of entrepreneurial behavior in Japanese long-established companies. Initially, management theory has taken major interests in big listed companies. On the other hand, the reevaluation for family business has globally been made. Interests are rising in Japan, and then "Business Succession Course" and "Family Business Course" are established at Japanese business schools recently. However,, though the number of long-established companies in Japan is the largest all over the world, a few researches regarding that are accumulated in Japan compared to the western countries.
In this lecture, we will analyze entrepreneurial behaviors in business succession of family business. In addition, by comparing cases of non-family companies, we could learn differences between family businesses and nonfamily businesses.

到達目標 / Achievement Goal


本授業の該当ラーニングゴール Learning Goals

*本学の教育ミッションを具現化する形で設定されています。

LG1 Critical Thinking
LG3 Ethical Decision Making
LG4 Effective Communication
LG7 Global Perspective (GLP)
LG8 Tax Accounting Consulting Skills (MSc)

受講後得られる具体的スキルや知識 Learning Outcomes

本講座の達成目標は以下の通りです。
(1)実践の厳しさに耐えうる強靭な基礎知識を習得する。
(2)経営環境の変化に応じた老舗企業のイノベーション活動を学ぶ。
(3)事業の存続を支えるガバナンスのメカニズムを学ぶ。

The main topics of this course are as follows.
(1) Students will acquire strong basic knowledge that can endure the severity of practice.
(2) Students will learn proactive behaviors of well-established companies that adjust to changes in the business environment.
(3) Students will learn the governance mechanism that realizes sustainability of business.

SDGsとの関連性 Relevance to Sustainable Development Goals

教育手法 Teaching Method

教育手法 Teaching Method % of Course Time
インプット型 Traditional 0 %
参加者中心型 Participant-Centered Learning ケースメソッド Case Method 100 %
フィールドメソッド Field Method 0 %
合計 Total 100 %

事前学修と事後学修の内容、レポート、課題に対するフィードバック方法 Pre- and Post-Course Learning, Report, Feedback methods

予習レポート
ケース :株式会社山本海苔店(東京都中央区)/日本の起業家 稲盛和夫
提出期限:講義初日の講義開始前(6/27(土)10:00まで)
提出方法:Google Classroomより提出、A4用紙3枚以内、PowerPointで作成することが望ましい。
課題  :「なぜ、同じ企業家(アントレプレナー)でも、ファミリー企業家(事業承継者)とベンチャー企業家(起業家)では求められる能力が異なるのか?その求められる能力は、どのような違いがあるのか?」
 アサインメントの問いを参考にしつつ、下記二点も勘案して考察して下さい。
 ①取り巻く環境の違い
  老舗ファミリー企業の後継者とベンチャー経営者(ゼロから事業を立ち上げる起業家)が置かれる環境について、どのような違いがあるでしょうか。
  経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)や取引先など多様な観点から考えて下さい。
 ②思考や行動の違い
  上記①の環境のもと、老舗ファミリー企業の後継者とベンチャー経営者の思考や行動には、どのような違いがあるでしょうか。
  具体的には、事業ドメインの設定や経営資源の調達や展開などの観点から考えて下さい。

最終レポート
ケース :合資会社大和川酒造店(福島県喜多方市)
提出期限:講義最終日の講義終了時 (7/5(日)17:00まで)
提出方法:Google Classroomより提出、A4用紙3枚以内、PowerPointで作成することが望ましい。
課題  :「なぜ、事例企業の事業承継者は地域社会に根ざした経営をする必要があるのか」
 アサインメントの問いを参考にしつつ、下記二点も勘案して考察して下さい。
 ①老舗ファミリー企業の地域への依存
  大和川酒造店は、喜多方地域に何を依存し何を喜多方地域に何を提供しているでしょうか。企業と地域との相互依存関係の観点から考えて下さい。
 ②地域社会が後継者の行動に与える影響
  後継者が、今後新製品開発などの革新的行動を行う場合、喜多方地域とどのようにつき合っていくべきかの観点から考えて下さい。

授業スケジュール Course Schedule

第1日(Day1)

【セッションⅠ】
テーマ:後継者の先代世代への資源依存と独自の資源獲得

内容:
 通常、ファミリービジネスの後継者は、先代世代のレガシー(ヒト、モノ、カネの経営資源等)に依存・活用することができます。他方、後継者が先代世代の経営資源に依存することは、積極的な効果と消極的な効果を生み出します。

 本セッションでは、承継プロセスを通じた後継者を育成していく上で、いかに後継者による先代世代への資源依存と独自の資源獲得をマネジメントすべきかを考察をしていきます。


●使用するケース
■ケース:株式会社山本海苔店(東京都)
[学習範囲:教科書『事業承継のジレンマ』p. 65-96]

第2日(Day2)

【セッションⅡ】
テーマ:ベンチャー企業家の資源獲得と資源依存

 ゼロから事業を立ち上げるベンチャー企業家は、自ら経営資源を獲得していかねばなりません。その意味では、ベンチャー企業家はファミリービジネスの後継者の後塵を拝すると考えられがちです。他方、ベンチャー企業家は、先代世代からの関係性等のしがらみがない分、自律的に思考や行動ができる利点があります。

 本セッションでは、ファミリー企業家(ファミリービジネスの後継者)とベンチャー起業家との比較議論を行うことで、ファミリービジネスの特質を浮き彫りにしていきます。


●使用するケース
■ケース:日本の起業家 稲盛和夫
[学習範囲:別途配布ケース「日本の起業家 稲盛和夫」HARVARD BUSINESS SCHOOL]

第3日(Day3)

【セッションⅢ】
テーマ:世代間の経営行動の連鎖性(世代を超えた企業家活動)

内容:
 老舗企業の事業承継は、「駅伝リレー」として表現されることがあります。一般的にリレーランナーは、前走者からバトンを引き継ぎ、自分の区間責任を果たし、次走者へバトンを受け渡す責任があります。これは、事業承継も同じです。後継者は、先代経営者から事業や伝統を受け継ぎ、自分の時代に適合した経営革新を起こし、次世代に事業や伝統を引き継いでいかねばなりません。

 上記を実践する上で、実際の事業承継プロセスでは、二つの重要なポイントがあります。第一に、事業や伝統の承継です。具体的には、後継者による先代経営者の経営実践の参照(模倣化)という経営行動です。第二に、経営環境の変化に伴う次世代の経営革新です。具体的には、後継者が先代経営者と差別化された経営行動の実践です。

 本セッションでは、後継者が先代経営者の実践から何を参照(模倣化)し、何を革新(差別化)しているのかについて、製品サービスレベル、市場レベル、ビジネスシステムレベル等、多様な観点から議論を展開する予定です。

●使用するケース
■ケース:株式会社あみだ池大黒(兵庫県西宮市)
[学習範囲:教科書『事業承継のジレンマ』p. 97-120]

第4日(Day4)

【セッションⅣ】
テーマ:ファミリービジネスと地域の関係:資源、雇用、市場の依存関係

内容:
 企業を取り巻く利害関係者(ステークホルダー)には、顧客、取引先、銀行、株主、行政、地域社会等があります。企業の長期的な存続と成長には、これらの利害関係者との相互依存関係を抜きに考えることはできません。

 特に地域社会は、企業にとって重要な利害関係者となります。地域社会は、企業に対して雇用や原材料等を提供しています。企業は、イノベーションを生成する際に、地域社会からの資源の提供という恩恵をうけます。反対に、企業は、地域からの恩恵を受けるが故に、地域社会に対して納税や社会貢献等を行っています。

 本セッションでは、企業と地域社会との関係が、企業の存続と成長に不可欠なイノベーションの生成とガバナンスの構築にどのような意味を持っているのかについて、多様な観点から議論を展開する予定です。

●使用するケース
■ケース:合資会社大和川酒造店(福島県喜多方市)
[学習範囲:教科書『事業承継のジレンマ』p. 141-160]

第5日(Day5)



第6日(Day6)



第7日(Day7)



成績評価方法 Evaluation Criteria

*成績は下記該当項目を基に決定されます。
*クラス貢献度合計はコールドコールと授業内での挙手発言の合算値です。
講師用内規準拠 Method of Assessment Weights
コールドコール Cold Call 0 %
授業内での挙手発言 Class Contribution 50 %
クラス貢献度合計 Class Contribution Total 50 %
予習レポート Preparation Report 20 %
小テスト Quizzes / Tests 0 %
シミュレーション成績 Simulation 0 %
ケース試験 Case Exam 0 %
最終レポート Final Report 30 %
期末試験 Final Exam 0 %
参加者による相互評価 Peer Assessment 0 %
合計 Total 100 %

評価の留意事項 Notes on Evaluation Criteria

使用ケース一覧 List of Cases

    ケースは使用しません。

教科書 Textbook

  • 落合康裕「事業承継のジレンマ:後継者の制約と自律のマネジメント」白桃書房(2016)978-4641123557

参考文献・資料 Additional Readings and Resource

・後藤俊夫・落合康裕(2018)『ファミリービジネス白書2018年度版』白桃書房.
ISBN-10: 4561267123 ISBN-13: 978-4561267126

授業調査に対するコメント Comment on Course Evaluation

受講生の方々からは、「今現実に直面している課題に役立った」「新しいアプローチを学べた」等、前向きな意見を頂いています。講義では、ケースメソッドを通して受講生の方々が実践の厳しさに耐えうる強靭な学識を習得できるよう、講師も全力を尽くします。

担当教員のプロフィール About the Instructor 

大和証券株式会社入社後、本社人事部にて組織運営業務、大和証券SMBC金融法人部にて大手機関投資家に対するRM業務を担当。その後、研究者に身を転じて、2014年に日本経済大学経営学部(東京渋谷キャンパス)准教授に就任。2018年より現在の静岡県立大学大学院経営情報イノベーション研究科准教授に就任。

現在、ファミリービジネスの事業承継について経営学の観点から研究を行う。大学での研究活動を軸に、ビジネススクールにおけるケースメソッド形式による事業承継講座を担当するほか、後継経営者の教育に従事する。2015年に、日本で初めてのファミリービジネスの実証研究書となる『ファミリービジネス白書2015年度版』を株式会社同友館から発刊。2018年に『ファミリービジネス白書2018年度版』、2022年に『ファミリービジネス白書2022年度版』、を株式会社白桃書房から発刊。同書の刊行時より、企画編集委員長をつとめる。
著書に、『事業承継のジレンマ:後継者の制約と自律のマネジメント』白桃書房(ファミリービジネス学会賞・実践経営学会名東賞受賞)など多数。

【職歴】
1997-2011 大和証券株式会社
  1997-2001 京橋支店
  2001-2008 人事部 人事課長代理
  2008-2011 大和証券SMBC株式会社金融法人部 次長
2014-2018 日本経済大学経営学部(東京渋谷キャンパス) 准教授
(在籍間中、2017年3月ポーランド・コズミンスキー大学訪問教授)
2018- 静岡県立大学大学院経営情報イノベーション研究科 准教授
2020- 静岡県立大学大学院経営情報イノベーション研究科 教授 (昇任)

2016- 名古屋商科大学大学院マネジメント研究科 客員教授(現在に至る)
2017- 一般社団法人100年経営研究機構顧問(現在に至る)
2017- ファミリービジネス学会常任理事(現在に至る)
2019- 早稲田大学大学院経営管理研究科(WBS) 非常勤講師(現在に至る)
2019- 事業承継学会常務理事(現在に至る)
2022- テクロ株式会社社外監査役(現在に至る)

【学位】
博士(経営学)〈神戸大学〉2014年

【受賞歴】
実践経営学会名東賞 2017年
ファミリービジネス学会賞 2017年
Teaching Award 2017(名古屋商科大学大学院)
Teaching Award 2018(名古屋商科大学大学院)

Biography:
Yasuhiro Ochiai is an Associate Professor at School of Management and Information based at University of Shizuoka. He is a leading authority on Japanese family business, business succession and successor’s entrepreneurship. Currently he researches succession of Japanese family business from perspectives of business strategy and business administration. In addition to research activities at university, he is in charge of business succession courses by case method at Nagoya University of Commerce & Business accredited by AMBA and acquired AACSB International membership. Also he takes care of seminars for successors and consultants. He is the chief director of editorial board about publication of “White Paper on Family Business 2015”, the first book of Family Business based on an experimental study in Japan. In 2018, they published “White Paper on Family Business 2018”. Professor Ochiai won some awards for his book and academic papers. In particular, his main book “Successor’s Dilemma” was given Japan Academy of Family Business Best Book Award and Japan Society for Applied Management Nato Award in 2017.
 
Doctoral Thesis:
“Business Succession Research of Family Businesses: Business Succession and Successor's Behavior in Japanese Long-lived Companies”, Graduate School of Business Administration, Kobe University doctoral thesis, 2014 (in Japanese)
 
Work Experience:
Apr. 2020 – present
Professor, Faculty of Management and Information, University of Shizuoka
Apr. 2018 – 2020
Associate Professor, Faculty of Management and Information, University of Shizuoka
Apr. 2014 – Mar. 2018
Associate Professor, Faculty of Management, Japan University of Economics
Apr. 1997 – Aug. 2011
Daiwa Securities Group Inc.
 
Honors & Awards:
 2017 Japan Academy of Family Business Best Book Award
 2017 Japan Society for Applied Management Nato Award
 2017 NUCB Business School Teaching Award
 2018 NUCB Business School Teaching Award

Refereed Articles

  • (2017) Proactive Behavior of Successors in Japanese Business Succession. Entrepreneurship and Social China, Japan, and South Korea, Nanjing University Press, pp.174-196.
  • (2016) Business Succession and Successor Legitimacy in Well-Established Family Companies in Japan. International Journal of Business and Information 11(03): 1746-0972
  • (2015) A New Epoch of Japanese Family Businesses : Continuity and Innovation of Centennial Firm. Transactions of the Academic Association for Organizational Science 4(1): 2186-8530
  • (2015) Succession and Transgenerational Behavior in Japanese Legacy Company : Case Study of Yamatogawa Brewing Company in Fukushima. Journal of business succession 4






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